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森村誠一が鄙びた雰囲気を絶賛した『霧積温泉 金湯館』

山小屋風の本館は創建時の建築。渓流の水音だけが響く。紅葉は10月下旬~11月上旬。

 群馬県・鼻曲山の山腹、緑が迫りくる渓流沿いに金湯館は佇む。地元有志により創業されたのは明治17(1884)年。当時、一帯は旅館や別荘が42軒も建つ避暑地として栄え、伊藤博文、勝海舟、与謝野晶子といった著名人が訪れた。しかし明治43(1910)年に山津波が集落を飲み込み、ただ一軒、金湯館だけが残った。荒地の宿を継いだ佐藤家の4代目・淳さんは語る。

「車が通れる林道ができ、電気と電話が通じたのは1981年。僕が小学生の時でした。今も不便で温泉だけが魅力の秘境ですが、最近は若い男性一人客が増えています。人気のない静けさを求めて来られるのかなと思います」

 作家・森村誠一は、金湯館で着想を得て執筆した『人間の証明』の中で、「この世から完全に切り放されたような鄙びた雰囲気は、申し分ない」と記している。なお、旅館には森村のサインも飾られる。そこには「金湯館様 人間の証明 森村誠一」とある。

人里離れた場所にある「霧積温泉 金湯館」

宿に続く林道は一般車両進入禁止

川魚の塩焼き、山菜の天ぷら、大椀の豚汁など8品が並ぶ夕食

源泉かけ流しの湯は、微細な気泡を含むカルシウム硫酸塩温泉

伊藤博文らが明治憲法草案を練ったとされる本館1号室

【霧積温泉 金湯館】
住所:群馬県安中市松井田町坂本1928
1泊2食:大人1名 1万1490円(入湯税込)~
アクセス:JR信越本線・横川駅~宿の送迎あり。マイカーの場合は、宿の駐車場からホイホイ坂を徒歩30分、もしくは宿の送迎(宿泊客のみ)。

撮影■佐藤敏和

※週刊ポスト2019年9月20・27日号

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