西武HDの新本社ビル「ダイヤゲート池袋」
◆「防災面」をアピール
──西武ホールディングスの中核事業はやはり「鉄道」です。しかし西武沿線は、他の私鉄と比較して開発の面で後れを取っているイメージがある。今後の打開策は?
後藤:沿線の開発余地が大きいことは、大きなアドバンテージであると考えています。最近、特に強くアピールしているのが、「防災面」での強さです。
地盤の調査・解析などを手掛ける「地盤ネット」という企業が東京のJR、私鉄沿線を調べたところ、地盤の強さは西武池袋線がトップで西武新宿線が第2位という結果が出た。
西武池袋線では石神井公園、大泉学園、保谷、ひばりヶ丘あたりが特に地盤が強く、西武新宿線も上石神井以西が特に強固でした。
地震大国である日本では、地盤の固さは、オフィスにしろ住宅にしろ重要なポイントです。基礎工事の費用も安く済む。この点をアピールしていけば、今後の競争力は増していくとみています。
──人口減や少子高齢化が加速し、都心回帰の逆ドーナツ化現象が進むなか、郊外では空き家も増えている。これまでのような私鉄沿線文化は維持できなくなる懸念もあります。
後藤:確かに都心回帰の傾向は根強いですが、悲観することはないと考えています。これからはテレワークが浸透してきて、在宅勤務など新しいスタイルの働き方が主流になってくる。
5G(第5世代移動通信システム)のサービス開始などデジタル社会がますます高度化していくと、今後は逆に都心に住む必要性が少なくなると見ています。
もともと、郊外のほうが地価は安く、自然環境もいい。我々は今後、シェアオフィスも駅ビル等の利便性の高い場所に作っていく。
わざわざ片道1時間かけて都心に通勤するスタイルは減っていくでしょう。西武グループとしても新しいライフスタイルを提案していきたい。
【PROFILE】ごとう・たかし/1949年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、1972年に第一勧業銀行に入行。2003年みずほフィナンシャルグループ発足後、常務執行役員、みずほコーポレート銀行常務取締役、取締役副頭取を歴任。2005年2月に西武鉄道特別顧問、5月に同代表取締役社長。2006年2月から現職。2004年に上場廃止となった西武鉄道を2014年に西武ホールディングスとして再上場に導く。
●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2019年10月4日号