大橋さんはその日から、わずか約3か月後に帰らぬ人となったという。がん治療では心理面のケアも大きなパーセンテージを占めるはずだ。それなのに、と考えてしまう。前出の大津さんが、このやりとりを評して言う。
「双方の意見を聞いていないのではっきりしたことは言えませんが、それぞれの気持ちのすれ違いを感じるやりとりだと思いました。
患者さんとの接し方は大事。大橋さんは、いきなり『どこで死にたいですか』と聞かれたことで大きなショックを受けたということですが、唐突だったのかもしれません。本来なら『どう過ごしていきたいですか』などと聞きながらともに考えてゆくのが大切。医師のコミュニケーションスキルが試される場面ですね」
こういった“らしくない”在宅医が存在するのはなぜか。
「医療費削減のため、現在は国が在宅医療を推奨しており、携わる医師がしっかりした診療報酬を得られる制度になっています。つまり、今の医療機関が厳しい経営状況の中、在宅を行えば相対的には利益が出しやすいわけです。看取りのケアが得意でなく、患者さんとの接し方が充分とはいえない医師なども参入しているのが現実なのです」(大津さん)
今後は、さらに在宅医が増えるとみられており、医師やスタッフの見極めがますます必要になってくるわけだ。
「がんの場合は、痛み止めを『持続注射』してくれるか、痛みが強くなった際に患者さんがボタンを押せば薬を注入できる鎮痛法を行ってくれるかどうかなど、どんな処置をしてくれるかは具体的に確認した方がいい。また、いよいよ最期が迫った時に鎮静を行えるのかは重要。
緩和ケア病棟やホスピス、在宅緩和ケアで知られる医療機関での勤務歴がある医師かどうかもチェックした方がいいと思います」(大津さん)
※女性セブン2019年10月10日号