──しかし皆さん、本当にプロフェッショナルなブスですよね。今、顔面の話をすること自体がタブー視される傾向にあり、なんとなくブスにまつわる問題は無いことのように扱われます。でも、番組で彼女たちが赤裸々に話すことで「現実はこーだぞ」と見せつけられます。
濱崎:確かに「みんな違って、みんな美しい」は正論です。だけど、そんな建前だけで通すのは、実際には優しくないと思うんです。現実には「ブスで苦しんでますけど!」って人もいる。「こんなこと言われたんですけど、ヒドくないですか?」とグチる番組があってもいいんじゃないかなと思います。
──ブスメンバーが皆一斉にグチを吐き出す、あのガチャガチャ感こそ『ブステレビ』の魅力ですよね。そして、彼女たちの個性的なファッションも、密かに楽しみにしています。
濱崎:スタイリストがいないから全員私服で出演しているために、番組の画面がトータルコーディネートされていません。そのうえ、彼女たちのファッションセンスが、ことごとく変わっているんですよ。実は、結構お金をかけてキレイなセットで番組を収録しているのですが、その整ったセットの中に統一性がないうえに個性的すぎる私服の「ブス」が座ると、妙な違和感が生まれます。そのアンバランスさも、番組を観る人ににぎやかな印象を与えていると思います。
──視覚的にもガチャガチャしていたんですね。ひな壇は芸人と素人が分け隔てなく混ざっていますが、その、ごちゃ混ぜな席順も、濱崎さんのこだわりですか?
濱崎:こだわってはいませんが、個人的には一般の方がテレビに出ているのが好きなので、意識せずにいたら今のようになっていました。芸人さんにはテレビに出る理由があります。実際に出演している若手芸人がどんな心構えでいても、人前に出る仕事をしている人に対しては、視聴者からすれば「ビジネスでブスやってんじゃないの?」というバイアスがかかってしまう。だけど、一般の方が出演する場合はメリットが一切ない。彼女達が『ブステレビ』に「ブス」として出演する理由には、”楽しい”以外にないんですよ。そんなところが好きなんです。
──ちゃんと観ているとわかりますが、『ブステレビ』は視聴者以上に出演者が楽しんでいる番組ですよね。表面的にはブスに厳しいけれど、心根はすごく優しい。
濱崎:疲れた時に帰ってくる実家のような番組作りを心がけています。番組収録日、出演者は楽屋に集まると「おかえり」と言い合ってます。そして「ブス」といったデリケートな題材を扱う番組を作り続けていくためには、スタッフの決定的な優しさが必要なんです。些細なことでいえば、出演者が「こんなお菓子が食べたい」と言えば、次の撮影日には用意しています(笑)
──想像以上に繊細なバランスで成り立っているんですね。そこまでとは……、気づきませんでした。
濱崎:視聴者がどこで嫌な気持ちになるかはわからないし、完璧にはコントロールできない。しかし、出演者が嫌がる番組だけにはしたくないんです。「『ブステレビ』に来たくないな」なんて気持ちには絶対にさせたくない。一見、尖った番組だけど出演してくれてる「ブス」のみんなが楽しい場にしたいし、それを見て楽しんだり元気になってくれる視聴者の方を大事にしていきたいと考えています。
<毎週、ネットテレビに関するコラムを書いている。よって膨大な本数の番組を定期的に観ることとなる。「好き」から始めた仕事だが、書くためだけに鑑賞し、コラムに取り上げた翌週から離れるといった番組も多い。しかし『ブステレビ』は違った。コラムの題材にするために視聴を始めたが、いつの間にかファンになっていた。今回のインタビューを通して「番組が面白い」から以外の理由に気づく。僕は濱崎さんのアットホームな作風に惹かれたんだ。そして、『ブステレビ』が作り出す疑似家族を羨望の眼差しで見ていた。あぁ、女性に生まれていたら絶対に出たのに!(オーディションを合格できる自信はないけど……>
●はまさき けんいち/株式会社AbemaTVプロデューサー。2003年、テレビ朝日入社。『いきなり!黄金伝説。』『そうだったのか!池上彰の学べるニュース』など様々な人気バラエティ番組を担当。2016年よりAbemaTVの制作部門へ出向、『恋する週末ホームステイ』『Popteenカバーガール戦争』』『さよならプロポーズ』『おぎやはぎの「ブス」テレビ』、『指原莉乃&ブラマヨの恋するサイテー男総選挙』『DTテレビ』など数々のオリジナル番組を企画し、プロデューサーを務める。
●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週一回開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)