日産内部から名前が挙がる関潤氏(右・時事通信フォト)
日産側で名前が取りざたされている関潤は、防衛大学出身という異色の経歴の持ち主だ。日産の重要市場である中国と米国での職務経験がある。昨年まで5年間にわたり中国を拠点として、現地生産プロジェクトを率いて成功させた実績を持つ。前社長の西川によって海外事業の立て直し役に起用された。
しかし、仏経済誌シャランジュ(電子版)によると、日産と企業連合(アライランス)を組む仏ルノーは、関についてこんな評価をしているという。
〈西川路線を踏襲して日本や日産を擁護する「国粋主義者」だと警戒。(日産の取締役で指名委員会のメンバーである)ルノーのジャンドミニク・スナール会長の周辺は、関を排除し、「オープンな人物を任命すること」が優先課題だと話している〉
WSJの報道では、ルノー側のカードは三菱自動車のアシュワニ・グプタとされている。インド出身のルノーの元幹部で、ルノー・日産・三菱のピックアップトラック・バン、SUV(スポーツタイプ多目的車)事業の協業を監督する立場にある。アライアンスの3社の関係修復への貢献が期待できる。
日産の次期CEOは緊張をはらむ仏ルノーとの提携関係の針路を定め、日産社内の士気を高めることが求められる。だが、日産の関、ルノーのグプタでは、どちらが日産のトップに就いても、日産とルノーの対立は激化する。
そこで、とっておきの切り札は外部からのCEO招聘だ。
指名委員会委員長の豊田は、西川の事実上の“解任”を決めた取締役会で唯一、「もう少し時間をくれ」と言って、西川を守ろうとした。言葉だけを捉えると、確かに西川を守ろうとしたように見えるわけだが、別の側面もある。「豊田は“ポスト・西川”を外部から人選しようとしている」(日産の役員OB)。だから時間が欲しかった。
そこで、条件を満たす候補者として、サントリーHD社長の新浪剛史に白羽の矢が立ったということなのか。