「最も重要なのは『ペーシング』といって、声の大きさやテンポ、体の動きなどを相手に合わせること。例えば、パート先のお客様に『この店はどうなってるんだ!』と怒鳴られたら、同じくらい大きな声で『どうなさいましたか!?』と聞いてください。早口で慌てている人が来たら、自分も早口で、一緒に慌てましょう」
大声で怒鳴る人は、相手が萎縮することを想定しているため、怖がらずに大きな声を出されると隙ができる。慌てている人は、相手がのんびりしているとイライラするため、同じように早口で“共感”を示すのがよい。
「声の大きさや動きで同調することで、無意識のうちに好感を抱かせることができます。そのままペーシングを続けながら相手の言い分を聞き、相手の気持ちを探ってください。
この時、黙って話を聞くのは避けましょう。ペーシングができず、相手の気が済むまで話を聞き続けなければならなくなります」
ペーシングしながら「長らくお待たせしてしまい、申し訳ございません」「商品に傷がついていたのですね」など、相手の気持ちを代弁することができれば、相手の「そうなんです」を引き出せる。
「あとは、相手が『そうなんです』と答えそうなことを3回は繰り返してください。『お出ししたビールがぬるかったのですね』『こんな暑い日に、がっかりなさったでしょう』と、続けるうちに相手のゴールが見えてくるはず。
『サーバーの調子が悪くて』などと説明はせず、相手に『そうなんです』と言わせることだけに集中してください。超共感法で“味方につけた”後なら、新しいビールを出すまでに何分かかるかの説明も、冷静に聞いてもらえます」
万が一、超共感法でも怒りが収まらない場合は、「すぐに対応できないので、後日あらためて連絡します」など、クールダウンの時間を設けるといい。
「『後日あらためて』という言葉を過剰に嫌がるようであれば、金品目的の悪質なクレーマーの可能性が高い。ご近所トラブルでも『お詫び』を要求されることがあるので、相手の要求にどこまで応えるか、あらかじめ線引きしておくといいでしょう」
◆クレームノ≠嫌がらせ 丸く収めて味方を増やす