芸能

大友康平はなぜ刑事役が似合うのか?そのカリスマ性の秘密

俳優として活躍が続く大友康平

 現役ミュージシャンで俳優としていい味を出す人が増えているが、大友康平もその1人だ。映画やドラマで活躍中の大友が今回、演じているのは刑事。その魅力についてコラムニストのペリー荻野さんが解説する。 

 * * *
 千葉雄大主演のNHKプレミアムドラマ『盤上の向日葵』(最終回は10月6日再放送)は、発見された白骨死体が、なぜか数百万円の価値を持つ将棋の駒を抱くように埋められていたことから、大企業の社長の座を捨てて、プロ棋士を目指す青年・上条(千葉)との関りが浮上する。

 ここでいい味を出したのは、埼玉県警捜査一課のベテラン刑事石破を演じた大友康平だ。石破は、かつてプロ棋士を目指し、挫折した女性警察官佐野(蓮佛美沙子)とともに事件を追う。駒の価値やそれを埋めた意味を佐野が必死に訴えても、捜査本部の男性刑事たちは鼻で笑うばかりだが、石破だけは佐野の言葉に耳を貸すのである。

 大友といえば、来年、デビュー40周年を迎えるロックンローラー。おっさんらしいダボっとしたスーツ、やたら扇子でパタパタしながらがに股で歩く石破は、折り目正しさとは無縁のロッカー刑事である。

 ロッカー刑事といえば、舘ひろしでしょという人もいると思うが、ここで思い出すのは、石橋凌だ。石橋もまたARBのボーカルだったが、俳優として活躍。TBSの横山秀夫のサスペンス『密室の抜け穴』などで渋い刑事を演じている。さらに遡れば、昭和の名シリーズ『太陽にほえろ!』のボギー刑事役で人気を博した世良公則もいる。また、80年代のトレンディドラマの代表作『君の瞳をタイホする!』には陣内孝則もいたが、犯人じゃなく、君の瞳を逮捕してどうするんだという展開のラブコメなので、これは例外刑事ともいえる。

 ロッカー刑事の一番の特長は、独特の存在感だ。大友の演技について、共演したことがある船越英一郎は『ごごナマ』の中で「カリスマ性がすごい」「犬、子ども、大友康平」と評していたが、それは的を射た表現である。犬や子役はそこにいるだけでも、少し演技をしただけでもたちまち観る者の心をつかむ。ロッカー刑事に求められるのは、はみだしたイメージと事件を解決したいと燃やす魂。それさえあれば、細かい演技はしなくてもよし!

 もうひとつの特長は、彼らの話し方だ。ぶっきらぼうでガラガラ声。だからこそ、ちょっと優しいことを言えば、優しさ倍増。しかも、何事もメッセージのように聞こえてくるから不思議だ。大友ロッカー刑事もまったく将棋を知らないが、「いつの世でも天才てのは、凡人にはわかんねえ重たいもんを背負ってんじゃねえのか」とか「そこに身を置いた者にしかわからないこともある」なんてことを言う。

いつも大きな声で歌っている彼らが、小さめの声で言うと、すごく重要なことを言ってるように聞こえるのである。そういえば、石橋凌は田中角栄を、大友康平も総理大臣を演じたことがある。カリスマ性とメッセージ力なくしてはできない役だ。

 キャリアのある中年ロッカーたちが漂わせる「いろいろあった感」は、ドラマに深みをもたらす。泉谷しげる、武田鉄矢などフォーク畑出身の俳優とは雰囲気が違うところも面白い。地道に事件に食らいつくロッカー刑事。また観たいと思う。

関連記事

トピックス

無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
Instagramにはツーショットが投稿されていた
《女優・中山美穂さんが芸人の浜田雅功にアドバイス求めた理由》ドラマ『もしも願いが叶うなら』プロデューサーが見た「台本3ページ長セリフ」の緊迫
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
スポーツアナ時代の激闘の日々を振り返る(左から中井美穂アナ、関谷亜矢子アナ、安藤幸代アナ)
《中井美穂アナ×関谷亜矢子アナ×安藤幸代アナ》女性スポーツアナが振り返る“男性社会”での日々「素人っぽさがウケる時代」「カメラマンが私の頭を三脚代わりに…」
週刊ポスト
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン