しかし、実現はそれほど容易ではない。その原因は音の問題だ。新幹線のように高速走行する車両では風切り音が騒音の主な発生源となる。そしてこの風切り音は車両の速度が上がるにつれ大きくなる。騒音の上限が定められている以上、速度を上げるには車両や地上設備の騒音対策が必要となり、これに手間がかかるのだ。
実例を見てみよう。新幹線の東京~大宮間では新幹線は時速110キロの速度制限がかかっている。ここを仮に時速320キロ(東北新幹線最高速度)を出すとすると、単純計算で15分以上の時間短縮が見込めるという。また、JR東日本も吸音板の設置工事といった騒音対策を通じてこの区間の制限速度を時速130キロに上げようとしている。新幹線と騒音問題には密接な関係があるのだ。
●取材・文/コリン堂(早稲田大学鉄道研究会)
●参考文献/環境省「在来鉄道騒音について」https://www.env.go.jp/air/noise/zairai.html、同「新幹線鉄道騒音に係る環境基準について」https://www.env.go.jp/kijun/oto3.html(いずれも2019年9月13日閲覧)、日本経済新聞「在来線の騒音、法的規制なく 小田急線騒音訴訟」(2010年8月31日付)、同「2年かけて1分短縮へ 新幹線上野―大宮間の工事着手」(2018年7月9日付)、阿部英彦「鉄道騒音・振動の発生メカニズムと対策」(1981年)