日暮里駅の陸橋から線路を望む(筆者撮影)
ここで改めて、騒音の原因を考えてみる。電車の騒音には大きく分けてレールと車輪の音・モーター音・風切り音・パンタグラフ由来の音の4つの原因がある。1つ目の、レールと車輪の音はどのようにして発生するのだろうか。当然のことだが、凹凸の激しいレールの上を車輪が転がれば騒音が発生する。キャスター付きのスーツケースを転がす際、凸凹な田舎道と、高級ホテルの滑らかな床では音が違うがそれと同じ原理だ。
また、鉄道のレールは鉄でできているので、夏冬の気温差により伸縮する。これを吸収するためにレールのつなぎ目には隙間があるのだが、これを車輪が通過する際にも騒音が発生する。スーツケースの例でいえば、レンガ舗装の道を転がす際の音と同じ原理だ。新幹線でもこの音は発生するが、高度なレール整備と、特殊な軌道、防音壁、ロングレールと伸縮継目等を用いて大きく抑制している。
なお、田端では聞こえず、日暮里では聞こえた新幹線の音は、このレールと車輪の音であろう。通常、これらの音は防音壁によって遮断されるのだが、日暮里では道路が線路の上側にある構造上、防音壁の効果がないため聞こえるのだと考えられる。在来線ではこのレールと車輪の音、そしてモーター音の2つが騒音の主な原因となる。新幹線の場合は、このモーター音も車体の防音設備により車外へ漏れ出ることを防いでいる。
次に風切り音だ。これは空気中を物体が高速で移動したときに気流の乱れによって発生する音で、速度が速くなれば大きくなる。パンタグラフ周辺の音もこれと同様の原因であるが、さらにパンタグラフが架線から一時的に離れた時に発生するスパーク音も加わる。在来線はそこまでの速度を出さないため、風切り音も大きくはならない。新幹線は速度を出すため、これらが主な騒音の源になるが、日暮里や田端といった都心付近では終着駅が近いため速度も出ておらず、ほとんど聞こえない。
最後に、ここまで新幹線は静かだ、無音だと書いてきたが、それは関係者の多大なる対策の結果である。新幹線の高速化において、音は最も大きな問題のひとつだ。新幹線は、車両の動力性能や保安設備の性能面だけから言えばさらなる運行速度アップは容易だ。