ぐっちーさんこと山口正洋氏が9月24日、食道がんで急逝した。享年59。ぐっちーさんは慶応大学卒業後に丸紅勤務を経て米ウォールストリートに転身し、モルガン・スタンレー(MS)やABNアムロなど欧米の金融機関で活躍した。2000年代半ばからは金融ブロガーとしても名を馳せ、2007年にはサブプライム問題の重要性をいち早く説いて注目を集めた。
その後、“モノ言う投資銀行家”としてメディアでも頭角を現し、2012年の『なぜ日本経済は世界最強と言われるのか』(東邦出版)を皮切りにベストセラーを連発し、M&Aや民事再生など幅広いビジネスを手がけた。
そんなぐっちーさんに筆者がインタビューしたのは2008年9月。リーマン・ブラザーズの経営破綻を一週間後に控えて市場の緊張が高まったこの時期、まだ露出の少なかったぐっちーさんは90分以上にわたって自らの考えを語った。追悼としてその一部を紹介したい。
取材テーマは「外資系企業のリストラ」。当時、サブプライム問題で業績が悪化した金融機関のクビ切りが盛んだったからだが、ぐっちーさんは「“外資=リストラ”は間違いだ」と断言して、外資系企業と日本企業のマインドの違いを力説した。
〈日本の会社は雇用を保証する代わりに転勤などを強いるが、外資は『対価は与える、嫌ならやめて結構』というスタンス。中でも米系の会社には移動の自由があり、きちんと仕事をしている限りは次の機会がフェアに保証される。例えばMSからゴールドマンサックス(GS)に移る場合、MSの上司はGSに素晴らしいレコメンデーション(部下の長所などを伝える文章)を渡す。そもそも会社にとって人材は命だから社員教育に多額のコストをかけて優秀な人材を育て、なるべく去られないようにする。俺もMSでは年5000万円かけてスキルアップしたからね。実際にクビを切られるのは末端レベルで、アメリカ企業の中枢社員の在籍年数は結構長いんだ〉(2008年9月のインタビュー時のぐっちーさんの発言、以下〈〉内同)