フェイクニュースが溢れる世の中でメディアを鵜呑みにすることに警鐘を鳴らし続けたぐっちーさんは、米国発の膨大な経済統計を丹念に原語で読み、全世界に影響を及ぼすアメリカ経済の見通しを毎週欠かさずメルマガで配信した。反骨精神にあふれながらユーモアある語り口で、大好きな広島カープやワインなどのトピックスを交えてしばし脱線するメルマガを愛読し、投資活動だけでなく人生そのものの道標とした読者は多いはずだ。
病床でも原稿を書き進めていたというぐっちーさんは、人々に何を伝えたかったのだろうか。11年前、ぐっちーさんは自らの将来についてこう語っていた。
〈いま48だけど、金融の世界で滑ったの転んだのするの、もうしんどいぜ。よく『ウォールストリートに戻ってこい』と言われるけど5億円もらってもイヤ(苦笑)。だからこの先はやりたいことをやろうと思っている。これは極めてプライベートな話だけど、下の子供が今年大学受験だから、それが終わったらリスクを取ることができる。
長く金融の仕事をしていてよくわかったのは、最大の成功要因はタイミングということ。現場をよく見ていると運用や経営のうまい下手ではなく、タイミングで90%決まる。波が来ないのにサーフボードで沖に出ても意味がない。いつ波が来るのかを感知するのは長年の経験としか言えないけど、最悪の時期がチャンスだったりする。
日本はこれまで放っておいても伸びたけど、これからは大変だな。自分の付加価値を高めていかないと、生きていくことが大変な時代が来るよ〉
厄介な時代を楽しみながら生きていくためのメソッドを人々に示し続けたぐっちーさん。溢れる情報を鵜呑みにして人生を他人に委ねるのではなく、自分の頭でモノを考えて、自らの手で生きる道を切り開くことのかけがえのなさを彼は教えてくれた。
●取材・文/池田道大(フリーライター)