生き馬の目を抜くウォールストリートで莫大な金額のディールを扱い、当時ビジネスマンだったトランプ米大統領と直に仕事をした経験を持つ。世界の一流人と人脈を築いたぐっちーさんは、インタビューで「内向きの日本」に警鐘を鳴らした。
〈商社の駐在員は現地の日本人としか付き合わないし、メディアはアメリカ人を取材した日本人から取材している。若い世代にはハングリーさがない。このままじゃ日本は危ない。
そもそも日本はプレイヤーこそ優秀だけど監督がダメだな。アメリカにはマネジメントのプロがいるけど日本の経営者はプロじゃない。アメリカのトップの自己研鑽はすさまじく、ハードワーク過ぎるから家庭が犠牲になって離婚する奴ばっかだよ。
彼らは常に行動を株主にウォッチされていている。日本は何かといえば『会社は株主ではなく従業員のもの』と主張するけど、じゃあ末端の従業員が経営をチェックして社長のボーナス額を決めることがある? この点でも日本は遅れているよ〉
現在にも通じる苦言だが、ぐっちーさんは日本を諦めなかった。リーマン・ショック以降にメディアでの発言が増えると、日本が持つ最大のブランドは「信頼」であると主張し、強い円ときめ細やかなサービスに支えられた日本経済は「世界最強」であると説いた。
疲弊する地方の再生にも乗り出し、2011年の東日本大震災では「自分の力で稼ぐことが最も大切」との信念とともに被災地支援に乗り出し、岩手県紫波町では補助金を使わず自立できる街づくりをめざす「オガールプロジェクト」に参加して復興のモデルを築いた。
一介の投資銀行家から、たったひとりで社会を相手に提言を続ける“啓蒙家”となったきっかけは、2005年8月から始めたブログだった。ぐっちーさんは、個人が不特定多数に自分の考えを表明するブログの世界についてこう肯定的に述べた。
〈テレビのコメントのように流れ去る言葉ではなく、文字で書き残すことはとても大切なことだよ。俺がブログを始めたのは、新聞が絶対に書かないことを書いてやろうと思ったから。いまは日経新聞すら情報源がなく書けなくなったから、その分自分がしっかり書く。最初は知人向けだったけど、読者が増えてくると俺が普通に生活をしていたら絶対に会えない人と出会えて、日常では絶対に聞けない話が聞けてすごく勉強になった〉