強くなったラグビー日本代表(時事通信フォト)

「韓国でラグビーがそれほどメジャーなスポーツではないのも大きいと思いますが、反発はありません。逆に韓国のラグビー仲間はみんな応援してくれています。『お前は日本代表でもあるけど、オレたち韓国プレーヤーの代表でもあるんだ』と。ぼくは日本と韓国の人たちに応援してもらえる。それがとてもありがたい。ぼくがW杯でがんばることで、韓国を好きになる日本の人が増えて、日本を好きになる韓国人が増えれば、これほどうれしいことはありません」

 日韓の懸け橋に──。25才の具は、W杯で、愛する2つの国に暮らす人たちの思いを背負って、スクラムを組み続ける。

 具の理想のスクラムが実現したアイルランド戦。日本の勝利以上に、胸を打つ光景があった。

 ノーサイドのホイッスルが響いたあと、アイルランドの選手たちが2列に並んで、ピッチを去ろうとする日本代表を称賛の拍手で送り出したのだ。世界ランク2位が、8位の日本に敗れたのである。悔しくないわけがない。それでも彼らは日本の勝利を称え、握手を求めた。

 死力を尽くしたあとは、敵も味方もない。ラグビーならではのノーサイド精神を体現する風景は、世界中のファンの心を打った。ラグビーは「尊重」のスポーツとも呼ばれる。共に戦う仲間を尊重し、対戦相手も尊重する。レフリーやファンに対しても敬意を払う。そんな背景を持つからこそ、ルーツや言語、文化が違う選手たちが、互いに理解し合えるに違いない。

 ONE TEAM──ひとつのチームに、が日本代表ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフ(49才)が掲げるスローガンである。

 ラグビー日本代表は、異なるルーツを持つ仲間を寛容に受け入れ、ひとつのチームになった。そんな日本代表に声援を送り続ける私たちファンも、ONE TEAMの一員だ。だからこそ、1つひとつのプレーに、そして、勝利の喜びに、涙できるのである。

取材・文●山川 徹(ノンフィクションライター)
やまかわ・とおる/1977年生まれ。山形中央高校2、3年時に全国高等学校ラグビーフットボール大会(通称“花園”)に出場。東北学院大学法学部卒業後、國學院大學二部文学部史学科に編入。主な著書に、『東北魂―ぼくの震災救援取材日記』『カルピスをつくった男 三島海雲』『国境を越えたスクラム──ラグビー日本代表になった外国人選手たち』など。

※女性セブン2019年10月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン