今日、カローラがバカ売れしているのはアメリカと中国だ。カローラスポーツのように海外規格のモデルを持ってくれば、日本でのフルモデルチェンジは簡単な改設計ですむ。現に、ホンダ、マツダ、スバルなどはとっくにそうしている。
トヨタもそうしたいのはヤマヤマだったに違いない。何しろトヨタは今後、グローバルでの販売車種数を大幅に減らす計画であることを公表しているのだ。いくらクルマの基本部分を共用化するとは言っても、サイズや仕様がオリジナルだと開発の手間は相当かかる。にもかかわらず、このタイミングでわざわざ日本専用のモデルを作ったのはなぜか。
「おそらくこれは、カローラにとって日本における最後の賭けなのだと思います」と、トヨタの技術系幹部の一人は言う。
「すでに広く知られていることですが、日本ではカローラはすでに、法人と高齢者のためのクルマになっています。ユーザーの若返りはモデルチェンジのたびに課題になっていたのですが、ほとんど効果がなかった。
このまま行くと遠くない将来、平均年齢がぼちぼち免許返納を考えるくらいまで上がってしまう。そうなったら日本ではカローラもいよいよおしまいです。そうなる前にもう一度、若返りを図ることにトライするのが、今回のカローラの使命なのだと思います」
創業80年を突破したトヨタはその歴史の中で多くのクルマを作ってきたが、昔ながらのブランドはもういくらも残っていない。その中でカローラは、オフロード4×4「ランドクルーザー」や貨物車「ハイエース」と並び、これからも残っていくであろう鉄板のブランドだ。が、それはグローバル市場での話。日本ではこのまま消えてしまっても、もはやほとんどの人が困らないクルマになっている。
「難しいのは、単にクルマを格好良くしたり高性能化したりすれば客足が戻るわけではないということです。
若年層にとってカローラは、そもそも名前を知らないか、会社の営業車やシニア向けのクルマといったネガティブイメージを持っているかのふたつにひとつ。いきなりクルマのキャラクターをガラリと変えて、既存の顧客を逃がし、新しい顧客は付かないということになったら目も当てられません。
ボディの肥大化を何とか最小限にしつつ性能やデザインを刷新して、既存顧客と新規顧客の両取りを狙おうとしているのでしょう」(トヨタ系販売店幹部)
クルマの成り立ちを見ても、サイズ面で既存顧客のカローラ離れを防止しつつ、デザインや仕様で若返りを図っているという意図が顕著に表れている。