本稿執筆時点では筆者はセダン、ワゴンとも本格的にテストドライブしていないが、クルマの基本部分を共有しているハッチバックのカローラスポーツを500kmほど走らせてみたときの印象に照らし合わせると、アクシオ/フィールダーとは比べ物にならないほど上がっていることは容易に想像がつく。
新しいカローラ族は、トヨタのクルマづくりの新規格「TNGA」のコンパクトクラス向け技術セットで作られている。つまりプリウス、「C-HR」などと共通性が高いのだが、カローラスポーツはその中でもクルマの完成度が1段階高い印象だった。
単なる速さだけでなく、スポーティな走りをしてもクルマの動きが落ち着いているのが特徴で、S字カーブでステアリングを切り戻すときもクルマのテールが変にブレたりぐらついたりすることが非常に少ない。また、舗装の補修跡が段差になっている箇所などでも、ボディのビビりやガツンという突き上げは最小限だった。
ドライビングインフォメーションが希薄であることをはじめ欠点もあるにはあるが、それでも競争の激しいグローバルCセグメント(フォルクスワーゲン「ゴルフ」などのクラス)において、相当ハイレベルな部類に入ることは間違いない。
セダン、ワゴンはカローラスポーツよりナローボディだが、走行性能を決める重要なファクターであるトレッド(左右輪の距離)はカローラスポーツとほとんど変わらないため、同じような特性を持っているものと考えられる。
また、比較的車両価格の安いグレードに最高出力140psのパワフルな1.8リットルエンジンを搭載するなど、クルマを魅力的にするという点ではカローラスポーツ以上に腐心している痕跡が随所に見られる。こういった仕立てはひとえにユーザー層の若返りを目的としたものと言える。
「これでもユーザー層の若返りが果たせるかどうかは未知数。昨年出たカローラスポーツでは若年層もある程度取り込めたので、若者にカローラは絶対受け入れられないわけではないということはわかりましたが、若年層はセダンはまず買いませんし、ワゴンを買うお客様はSUVに流れている。
どうしてもカローラでなければという決定的な訴求力があるかというと、依然として弱い」(首都圏のカローラ店首脳)
トヨタは新型カローラ発売後も、5ナンバーのアクシオ/フィールダーをしばらく継続販売するという。そうした“保険”がありながらも、セダンとワゴンを日本専用に用意したトヨタの心意気がユーザーに響くかどうか、興味深いところだ。