経営の第一線から身を引いた「ココイチ」の創業者、宗次氏
高田氏と同じく成功譚にしがみつくことなく、経営の第一線から身を引いたのは、『カレーハウスCoCo壱番屋』の創業者、宗次徳二氏(70)である。
引退するまでは友人を1人も作らず、3、4時間の睡眠で仕事に専念。毎朝4時台に出社して1000通以上のお客様アンケートに目を通し、店舗の清掃を行なうのが日課で、休みは年間15日ほど。並みの経営者以上の働きで大成功を収めたが、「三流経営者でも何とかなる見本でしょう」と謙遜する。
引退後は2003年に音楽やスポーツの振興、福祉施設やホームレスへの支援などを行なうNPO法人を設立して理事長に就任。さらにクラシック好きが高じて、2007年にはクラシック音楽の普及を目的とし、28億円の私財をなげうって名古屋に『宗次ホール』を建設。経済的理由で進学できない音楽家志望の奨学金支援や小中学校への吹奏楽器の寄付も行なうなど、社会貢献に力を注ぐ。
引退後も早起きは変わらず。町やホール周辺の掃除で汗を流し、四季の花を植えて人々を楽しませている。
「“早起きは百利あって一害なし”。毎日一生懸命生きるのが私の終活です」と語る。
●取材・文/下川良子(スペース・リーブ)
■渡辺達生作品展『寿影』
・10月4日(金)~17日(木)11時~19時
・ソニーイメージングギャラリー銀座:東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階
※週刊ポスト2019年10月18・25日号