ブログでもたびたびAくんのことを紹介してきた海老蔵
前述の通り、海老蔵はAくんを丹念にフォローして「特別扱い」ともいえる好待遇の環境で育ててきた。それなのになぜ、Aくんは歌舞伎界から姿を消したのか。梨園関係者が指摘する。
「いくら改革が進んでも、歌舞伎には技芸を継承する家元制度があり、世襲だけは覆せない。Aくんは勸玄くんと一緒に遊ぶことが多く、周囲からは“兄弟”のように見られていました。その“弟”である勸玄くんは来年5月に8代目・市川新之助を襲名する。一方の自分はきつい稽古を続けても端役から抜けるには時間がかかる。もちろん最初からわかっていた“格差”だが、若い彼には受け止めきれない現実だったのではないか。今彼は多感な高校2年生になった。誘惑も多い。残念ながら違う未来を描いたのかもしれません」
海老蔵を直撃すると、Aくんが歌舞伎界を去ったことを認めたうえで、「事務所で話し合って決めたこと」と言うのみだった。
松竹にもAくんの“廃業”理由などを問い合わせたが、期日までに回答を得られなかった。前出の梨園関係者はこう嘆息する。
「あれだけ目をかけていた弟子が辞めてしまうのはショックですし、言葉にしなくとも、海老蔵さんの本心としては怒りもあると思いますよ。グッとこらえているんでしょうけどね…。
確かに一般家庭の子が置かれる環境は厳しいけど、彼らは追い詰められたら辞めればいい。一方で世襲の子は厳しい稽古から逃げたくても逃げられない。選択肢はないに等しい。どんな立場であれ芸を極めるには、困難を乗り越える胆力が必要なことに変わりない」
歌舞伎界の人材不足は、一朝一夕には解決できる問題ではない。
※女性セブン2019年11月7・14日号