(4)e-RACER/トヨタブース

e-RACER(トヨタ自動車)

e-RACER(トヨタ自動車)

 今回の東京モーターショーのトヨタブースには、市販車や市販を視野に入れたコンセプトモデルは置かれていない。すべてハイテク満載の未来志向モデルである。カーシェアリング、モビリティサービスなどが普及し、クルマの個人所有がなくなっていく世相にどう対応するかを表現するコンセプトモデルが大半を占める中、唯一、個人所有をターゲットにしたクルマがe-RACERだ。

 一人乗りのフルオープンスポーツEV。もちろんトヨタもそんな極端なものが商品のメインストリームになるとは考えていない。それを敢えて出してきたのは、MaaS(クルマを所有しないことを前提としたモビリティサービス)が普及しても、個人所有は終わらないという見方を示すためだ。

 豊田章男社長は「クルマが普及したとき、アメリカでは1500万頭の馬がクルマに置き換わった。しかし、競走馬は残った。大勢のユーザーが共有するモビリティは馬車、個人所有は愛馬のようなもの。未来のモビリティはそのふたつが共存する社会になるのではないか」と、思いを説明した。車体にはトヨタのマークとともに「GR(ガズーレーシング)」のロゴがつけられている。そんな思いを見て感じてみるのも一興だろう。

(5)WAKUSPO/スズキブース

WAKUSPO(スズキ)

WAKUSPO(スズキ)

 軽クロスオーバーSUV、ハスラーの次期型が断然注目を浴びているスズキブース。キープコンセプトでブラッシュアップされたデザインはフィニッシュが良く、発売されれば大いに人気を得ることだろう。が、そのスズキブースでそれ以上に興味を引かれたのは、小型スポーツのコンセプトカー、WAKUSPOだった。

 2ドアクーペとステーションワゴンのふたつに形態変化するという時点で市販を目指したものでないことは明らか。スズキは2011年のショーにもレジーナという可愛い2ドアクーペのコンセプトカーを出品したが、その手のクルマを作る気配はなかった。

 今回もショーの花に終わる可能性は高いのだが、それでもWAKUSPOは見ていて萌える。ワゴンになったときは大して格好良くないのだが、出色なのは元の2ドアクーペ状態のスタイリング。イタリアの自動車ブランド、ランチアが製作したヘリテージ系コンセプトカー、フルヴィアとちょっとオーバーラップする良さだ。

 クルマ離れが進んだ今日、こんなクルマが実際に世の中に出てきても月100台くらいのセールスになってしまう可能性が高いため、登場は期待できない。とあらば、ここで実物を目にして、思い出のひとコマに焼き付けるのも悪くない。

 東京モーターショーの一般公開は10月25日から11月4日まで。会期中、100万人を集めると主催者である日本自動車工業会の豊田章男会長は息巻く。果たして一般ユーザーにこのイベントがどう映るか、興味津々である。

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