芸能

『令和元年版怪談牡丹灯籠』 噛まれたいファンが続出のワケ

番組公式HPより

 既成概念を打ち破る作品に出会った時の衝撃は、おのずと視聴者を興奮へと誘う。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析する。

 * * *
 おどろおどろしくて怖い。陰翳があまりに美しい。映像のクオリティの高さにうならされるドラマ『令和元年版怪談牡丹燈籠 Beauty & Fear』(NHKBSプレミアム 日曜午後10時)。江戸時代の有名な怪談話と、その背後にある人間関係の愛憎、因果応報を描き出しています。泥沼に咲いた妖花のような、不気味な世界が広がっています。

 新進気鋭の若手役者・上白石萌音さんは、源孝志監督から「獣になってくれ」と指示されたという。「相手が好きすぎて焦がれ死ぬ」という娘役・お露をどう演じるのか。

 上白石さん演じるお露は、浪人・新三郎(中村七之助)と出会い、許されぬ身分違いの恋に焦がれて死んでしまう。そしてカラン、コロ~ンと下駄の音を響かせ、愛しい男の元へ通ってくるお露の幽霊。

 しかし。ある時家の扉に貼られた魔除けの護符に阻まれ、男に拒絶されたことを知り、怒りをむき出しに。愛らしいあの目をひん剥いて、狂いながら宙を舞う怪物に豹変する。「ウォー」と声を荒げたその瞬間、お露には牙が生えている。

 見ているこちらも思わず、ぞくっ。

「上白石萌音のイメージが崩壊すると思う」と監督も最高評価で太鼓判を押したそうです。そう、「あの牙に噛まれたい」というオッサンのファンも続出しているとか。

 時代は江戸・寛保三年、本格的な時代劇です。電灯がなかった頃の暗闇が随所に潜んでいて、ドラマで重要な要素になっています。ワイヤーアクションや特殊メイクといった現代的仕掛けも闇の世界に上手に挿入され、エッジを効かせています。

 しかし、あくまでメインは「人間」の怖さ。カラクリではなく人が抱く欲望のグロテスクさです。その怖さといえば、第1話の冒頭のシーンも凄まじいものがありました。

「人を斬りたい」という欲望にとりつかれ、「斬ってみたい」という欲に駆られて、浪人に刀を振り下ろしてしまう旗本・飯島平太郎(高嶋政宏)。テラテラと光る血液。その粘性。ゆっくり土に染み込んでいく様子。刀のふりの重たさと、鈍く光る金属。空気を斬る音。

「肉体を、刀で斬る」ということがどういうことなのか。手触りや肌合いまでが映像から伝わってくる。だから怖い。そして、役者の迫力もすごい。

 何かにとりつかたような平太郎の白目が光っている。うすら笑いをしているようにさえ見える。クビから下に返り血を浴びたまま歩いていくその姿に、人の闇を見ました。

 これまでドラマで見た殺陣シーンの中で一、二を争う恐怖を感じたと言っても言いすぎではありません。 

関連キーワード

関連記事

トピックス

〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン