時は流れ、平太郎は家督を継ぎ飯島平左衛門に。すると侍女・お国(尾野真千子)が、平左衛門の妻の座を乗っ取り、次第に権力を掌握していく。
その過程も不気味です。色っぽくて性格の悪い女をやらせたら、尾野さんの右に出る人はいない。間男・源次郎を演じる柄本佑さんも、悪人ゆえの姑息さが出ていて、いい。若頭役・黒川孝助(若葉竜也)の身についた時代劇の小走りぶりも、いい。
緊張の漲った静謐な画面がいくつも重層的にあわさっているドラマです。色調は敢えて彩度を落とし、モノクロによる時代性とカラーによるリアリテイの中間を狙い、そこに江戸時代を浮かび上がらせている。そして琵琶の弦の「ぼろろん」という音が響き亘ると、切なさも迫ってくる。語りの神田松之丞の声もいい。
拙速でなくゆったり、まったりと、恐怖をかき立てていく物語。入り組んだ人間の綾、その一つ一つに、ヒリヒリとした緊張があります。こうなったら源監督にはぜひ、時代劇「三大怪談」の全ドラマ化を期待したいもの。令和版『四谷怪談』と『番町皿屋敷』も、素晴らしい配役で見てみたい。画面の前で再び闇の気配に震え身を縮めてみたいと、心底感じさせてくれました。