人前に出ることが大好きだったという古田新太
天性といわれる演技のセンス。ベースに、真面目な努力家の顔がある。大学は迷わずミュージカル科に進み、舞台人の「武器」を増やしていった。ものごとをハスから見る癖というのも、武器のひとつとなったに違いない。
「何ごとも負けたくない」と言い、まだ役者だけでは食えなかった時代、バイト先の中華料理屋でも腕をみせたという。
「やるからには『旨いねー』と言わせたい、喜ばせたい! おいらが入っている火曜日は絶対に売上げ伸ばす! 実際、伸ばして最終的には麺打ってました」
やがて『劇団☆新感線』で異彩を放ち、今や映像の世界でも引く手あまたである。「人前でおおっぴらに嘘がつける。こんな面白い職業はないですね」と唇の片端を上げた。変幻自在に演ずる『怪優』。だが、そんな彼にも役柄を限定していた時期があったときく。
「尖ってましたからねえ。役に強いこだわりがあって、おいらのシーンはおいらが演出すると言ってたほど」
しかし、30歳を過ぎるころから柔軟になっていった。
「固執しすぎると役の幅がどんどん狭まってしまうと気づいたんです。度量ができたんですね」と、神妙そうに言うが、素直に相手に添うほどやわな男ではない。
「相手がそう出るなら、おいらはこう出て邪魔してやれ、そこでびっくりするような化学反応が起こるんじゃないかって、逆に面白がれるようになったんです」
それもこれも芝居を愛してやまないからこそ。ここ数年、若手のイケメン俳優らにこぞって慕われるゆえんでもある。
「あいつらいいよ、食らいついてくるからね」