インタビューに答えるケネス・ルオフ氏(撮影:太田真三)

──海外では、王室でも男女平等が進んでいるということですか。

ルオフ:そうです。日本の右派の人々は、皇室の男系継承と男女平等は、まったく別の概念だと言いますが、私にはその論理がまったく理解できません。女性が天皇になれないというのは、ただの男尊女卑であって、女性を“子宮扱い”していると批判されても仕方がない。

 私が残念に思うのは、日本のフェミニストが、「女性天皇を認めろ」という主張をしないことです。もし女性が日本国民の象徴としての役割を果たせるようになれば、日本の女性の地位向上に大きく貢献すると思います。ですから、日本の女性は国会前で「女性天皇を認めろデモ」をしてもいいと思うのですが、見たことはありません。

 右派の人々は、「万世一系とされる皇統は一貫して男系による継承である」と主張していますが、日本の歴史学者のほとんどが「万世一系は神話だ」と言います。実際には断絶が起きている可能性が高いのです。もし、万世一系がフィクションであるとしたら、男系にこだわらなければならない理由はありません。

 伝統というものは変わっていくものです。占領軍が日本の憲法を改正させたときに、天皇の統帥権を廃止しましたが、保守系の人々は「統帥権の廃止なんてとんでもない」「明治憲法に戻さないと大変なことになる」と言い続けていました。しかし、20年ほど経つと、徐々に新しい考え方が出てきました。「天皇が統帥権を持つという明治時代の天皇の在り方は、むしろ天皇の本質からずれていた。長い歴史を遡れば、日本の象徴であるということが天皇の本質であり、象徴天皇制こそが日本の伝統だ」という考え方が出てきた。伝統の定義を変えたわけです。

 右派の人たちだけが伝統を定義する権利を持っているわけではありません。日本人には時代に合わないものを捨てたり、新しいものを入れたりして、伝統を変えていく権利があるのです。女性天皇や女系天皇についても、同じだと思います。

【プロフィール】ケネス・ルオフ Kenneth J. Ruoff/1966年米国生まれ。ハーバード大学卒。コロンビア大学で博士号取得。米国における近現代天皇制研究の第一人者。現在、米オレゴン州のポートランド州立大学教授、同日本研究センター所長。『国民の天皇』(岩波現代文庫)で大佛次郎論壇賞受賞。近著に、『天皇と日本人』(朝日新書)、『Japan’s Imperial House in the Postwar Era, 1945-2019』(ハーバード大学出版局) 、『天皇論「日米激突」』(小林よしのり氏との共著、小学館新書)がる。

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