バラエティのスタッフがグダグダキャラを重宝する理由は、「視聴者に親しみやすさや、人柄の良さを感じさせ、穏やかな笑いにつなげられる」から。「芸人なのに笑いを取るのが得意ではなさそう」というキャラの彼らは、視聴者にとって最も身近な芸能人。どこか友人や同僚を見るような感覚があるものです。
一方、スタッフにとって彼らは、「MCや共演者にツッコミを入れさせやすい」「強めのドッキリを仕掛けやすい」タイプの芸能人。たとえば、同じツッコミやドッキリをしても、グダグダキャラを起用したほうが「イジメている」「ハラスメントでは?」ではなく、むしろ「仲が良さそう」「愛されている」という雰囲気が出やすいのです。彼らがバラエティで重用されているのは、「イジメを助長する」「パワハラだ」という批判を防ぐための方法とも言えるでしょう。
現在のバラエティには、今回挙げた芸人のほかにも、コウメ太夫さん、ハリウッドザコシショウさん、永野さん、阿佐ヶ谷姉妹などのスポット的に“グダグダ芸”を披露するタイプの芸人も頻繁に出演。さらにバラエティのスタッフは、芸人以外のタレント、アイドル、アーティストでも、グダグダキャラを積極的に起用して笑いにつなげています。
芸能事務所や担当マネージャーも、「キャラが弱い」「トークが苦手」などのタレントに、「もっとグダグダなキャラにしてみたら?」と持ち掛けることもあり、しばらくはこの流れは続くのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。