碧梧桐の俳句は活字ヅラで読むより、書として鑑賞する時に、その「自由で愉快な」魅力が伝わってくる。日本の近代化が「西欧化」であると同時に「中国化」でもあったことをも、碧梧桐を論じることで解明していく。
著者は「かく」ことなくして文はない、という強力なワープロ・パソコン否定論者である。本書の中では芥川賞を二種に分け、手書きの「芥川賞」と別に「e芥川賞」をと提言している。その箇所を読んでいる時に思い出したのは長らく芥川賞銓衡委員を務めた瀧井孝作のごつごつとした選評の文章だった。瀧井こそが碧梧桐に激しく傾倒した大正文学青年だった。
※週刊ポスト2019年11月8・15日号