たとえば酢。体がやわらかくなると健康になるとか、根拠は全く不明だったが、基本的にまじめな家族3人だ。鳥肌が立つほどの酸味に身悶えながら水で薄めて毎日飲んだ。が、効果を感じる前に父が胃痛に耐え切れず、やめた。
夏の風呂上がりには、よくきゅうりパックをやっていた。「色白になるの」と言いながら顔中にきゅうりの輪切りを貼る母を見て、小学生の私は「貼ったところだけ白くなったらどうするの?」と、水玉模様になる心配をしたものだ。
そして母が40才頃だったか、少々病気がちになったことから、生卵を飲んでいた。どこで教わったのか、卵を茶碗に割り入れ、ほぐしも味付けもせず、勢いをつけてまさに“丸飲み”。母の姿に大蛇が重なり、怖かった。
効果も根拠も曖昧だったが、健康への意欲は満々だった母。
「結構、ママは凝り性だったよね」と言うと、当時を思い出したのか、「なんでもやってみるものよ」と笑った。
ふと見れば経口補水ゼリーも、上手に飲んでいた。
※女性セブン2019年11月28日号