生徒の発案で、7月に設けられた浴衣の日。学校からの浴衣と草履の貸し出しもあり、男子生徒のレンタル率も高い。着付けは地域の人がボランティアで手伝ってくれる。教員の多くも浴衣姿で授業を行う
もちろんスマホを解禁した以上、校長や教員は積極的に生徒が発信するSNSに目を通している。見守りの意味もあるが、それがコミュニケーションにもなっている。
生徒の方から教員をLINEグループに招待することが少なくない。コソコソと隠れて使う必要がなくなったことで、子どもたちは堂々と教員の目の届くところで発信するようになったのだ。
「使い方さえ注意すれば、スマホは小型のコンピューターですから、プログラミングやコミュニケーションの習得につながります。また、学習アプリを駆使して、英語の言い回しや難解な数学の問題にチャレンジする生徒もたくさんいます」
スマホに夢中になって、授業を聞かないケースはどうだろう。
「もちろん、皆無というわけではありません。授業を聞かない原因は2つあります。1つは、いつかの朝礼と同じく(かつて同校の朝礼はつまらず、生徒が聞かない傾向があった)、授業がつまらないからです。居眠りするのも同様で、教員は眠ったりスマホをいじったりするより、思わず聞きたくなるような面白い授業をするべきです」
工夫がなく、ただ垂れ流すような授業をするべきではないということだろう。
実際、これまで何十回と同校を訪れている保護者は、「スマホに夢中になって授業を聞かない生徒をほとんど見たことがない」と言う。この学校では、教員が一方的に話して生徒が黙って聞くというような授業ではなく、生徒とコミュニケーションをとったり、図表を使ったり実験形式だったりと参加型の授業が多いことに驚かされる。
それでもスマホに夢中になる生徒がいる場合、もう1つの原因は、1年生に見られる“試し行動”の場合だ。
「小学校の6年間、教員からの指示待ちが当たり前だった環境から、桜丘中学校に入った途端、すべてが一変します。校則なし、スマホOK、授業中は寝てもいいし、何時に登校してもいいと言われる。すると、“どうせ怒るに違いない”とか、“先生は、いったいどこまで受け止めてくれるのだろう”と、あえて困らせるような行動をとります。
それは、幼少期に親の愛情を確かめるために見られる行動と同じです。スマホをいじるだけでなく、大声で授業を邪魔したりマンガを読んだりするのも、その1つです」