10月最後の土曜日に行われる文化祭『さくらフェスティバル』。エンディングでは、教員がツッパリに扮して嶋大輔の『男の勲章』を熱唱。生徒はダンスで加勢し、体育館中が熱狂に包まれた
毎年、学校見学に来て1年生の授業を見学した人は、「桜丘中はこんなに荒れてるんですか!?」と質問してくることが少なくないという。
しかし、校長や教員たちは動じない。試し行動をするこの1年生も、2年生に上がり夏休みになる頃には、しっかり落ち着いてくるからだ。
「もちろん、子どもたちをすぐおとなしくさせようと、最初にガツンと雷を落とせば簡単です。しかしそれは力によるねじ伏せにすぎず、そこに生徒との信頼関係は育まれません。これを繰り返せば、判断基準はいつも教員になり、生徒が自分で考えることをやめ、善悪の判断をつけられなくなってしまいます」
だからこそ桜丘中学校では、自由に考え、行動することが保障された環境下で、子どもたちが自ら気づき、変わっていくのを、じっと待つ。
「哲学者で教育者のルドルフ・シュタイナーが言っていたように、生まれながらに子どもたちには“よく生きよう”という意思が脳にプログラムされている。ただし、このプログラムを発動させるには、安心して自らを表現できるような環境が必要です。それは、自分はこんなことをしたい、こんなことが好きだと素直に言える環境です。
1年生の試し行動の期間は、そうした環境づくりに必要な大切な時間です。生徒と教員が互いに理解を深め、そこで信頼関係が築けると、生徒たちは見違えるように変化していきます。荒れたように見えた子どもたちが自ら考え、進んで勉強に取り組み、目標に向かってがんばるのです」
撮影/浅野剛
※女性セブン2019年11月28日号
