東京都世田谷区立桜丘中学校長の西郷孝彦さん

 わが子のみならず、生徒すべてを無意識に“うちの子”と呼ぶこの母親は、「この桜丘中で過ごすうちに、相手の状況を考えられる優しい心も育ててもらった」と、幾度も学校への感謝の言葉を口にした。さらにこう続けた。

「長男は今年で卒業ですが、1年たったら、今度は次男が入学します。世田谷は私立中学校を受験する家庭も多いのですが、毎日楽しそうな兄やその友達を見ている次男は、“ぼくの第一志望は桜丘中学校”と言っています。たとえ校長や先生たちが変わっても、私たち親世代が地域の大人として、この学校のよいところを支えていけたらいいなと思っています」

◆ひとりにすら愛情をかけられない人は…

 西郷さんは、保護者や地域を巻き込み、学校を変えていった。西郷さんは、著書の中でこんな話をしている。

《部活でもクラスの子でも、とても心配な子どもに焦点を合わせ、とことんそのひとりに尽くすのです。毎日話しかける、楽しい会話をする、勉強を教えてあげるのでも、一緒に歌を歌ってあげてもいい。

まずはその子だけを見るのです。すると、「愛情ってこういうことなのかな」とわかってきます。ひとりの子に時間をかけて十分に関わると、なぜかクラスや生徒全体が見えてくるのです。

 ひいきと言われても構いません。本当に心配だから寄り添うのです。なぜその子のことばかり気にするのか、子どもたちだって理解できます。子どもたちにだって、見えているのです。

 逆説的ですが、たったひとりにすら愛情をかけられない人は、全員を大事にすることなど、到底無理なのです。

 私はたったひとりの子どもを大切にしたい。この子にとっての幸せな学校とは? この問いの向こうに、「どんな子でも3年間楽しく過ごせる学校」があると考えています》(一部要約)

 これまで多くの“たったひとり”に寄り添ってきた西郷さんは、そのひとりを取り巻くほかの生徒にも、その親にも、地域までにも目を配り、寄り添ってきたのではないだろうか。

※女性セブン2019年11月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン