八七年にはNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』に出演、伊達政宗の叔父・国分盛重を演じた。
「ジェームス三木さんのホンに僕の役が面白く描かれているんですよ。姑息だったり、大将として空威張りしていたり、コソコソっと逃げたらまた戻ってきたり。非常に人間味がある。そういう風に心揺れる役の方が心が揺れない役より面白いですからね」
二〇〇〇年には台湾のエドワード・ヤン監督の映画『ヤンヤン 夏の想い出』にも出演した。
「僕のところに話が来て面接になって、『どんな役をイメージしていますか?』と監督さんに問いかけました。当時の日本人はエコノミック・アニマルと言われていて、ガツガツしたイメージをアジアの人は持っていると思っていました。ところが、ヤンさんが『この映画に関してはそういう描き方をしたくない』とハッキリと意見を持っていて。それで人に脅威を与えない、優しい人物として演じました。
接し方は日本の監督とはまるで違います。『こんな気持ちで演じて』というのはなくて、映像のフォルムから入る。
でも、その向こうにある内面を自分でこさえておかないとオーケーは出ません。スリリングでしたし、楽しかったですね。
その前に海外公演もしていましたが、向こうのお客さんは何を想像しているか予想つかないんです。だからこそ面白い。
監督さんになると、もっと先鋭化された言葉で接することができます。それが醍醐味でした」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。
■撮影/藤岡正樹
※週刊ポスト2019年11月29日号