例えば、8月21日に三代目弘道会系関連施設で当番していた藤島組組員が、原付きバイクの犯人に拳銃で撃たれた事件では、その瞬間の動画が流されている。動画には、事件の瞬間が映っている防犯カメラの映像と、それを確認しながらカメラで撮影している警察官の姿も映されていた。後日、銃撃の映像だけがネットや週刊誌で報じられた。
10月10日の神戸山口組の五代目山健組で組員2人が、三代目弘道会系幹部に銃撃された事件では、犯人が自分の頭を弾いて血を流し倒れている写真が何枚も送られている。この写真もテレビのニュースで報じられた。つまり、これらの事件でメディアが使った映像は暴力団関係者が発信元ということだ。
「撃たれた組員の状態や、持病持ちの68歳の犯人が、家族の面倒をみてもらえるという条件でヒットマンになったらしいという話も送られてきたがね」
11月18日、熊本で神戸山口組系の四代目大門会会長が山口組系の組員2人に切りつけられた事件では、まさに極道映画を思わせるシーンが描写されていた。
「事務所の隣が工事をしていて、作業服姿の2人が菓子折りを持って、ご迷惑をおかけしますってインターホンを鳴らした。会長がドアを開けたら、1人がいきなり腹を刺してきたがそれをかわし、もう1人に首を狙われたがそれもかわしたってことらしい」
他にも高山氏が打ち出す方針や人事に反発する現場からの不満、組の行く末を憂う元幹部の嘆きもあれば、週刊誌への皮肉もある。組に対する不平不満は山口組系だけとは限らない。他の団体でも文書などが出る度に、誰かが写真を撮ってはラインで流している。
新聞や週刊誌、ネットの記事、人事通達や噂話、他団体の人事、時に会合の様子までもがラインで共有される。抗争とは関係のない細かな事件は『暴力団ニュース~ヤクザ事件簿』というサイトの「全国ヤクザ事情」の記事が転送されてくる。
「情報としては警察の方が早いと思うが、他府県の情報はなかなか取りづらいからね」
元組長は話しながら、ラインの画面を気軽にチラ見させてくれた。それをこうやって記事にしているのだから、ラインに流される内容は、実は漏えいと拡散されることを見込んだ情報ということなのだろう。