──ファンケルとは今後どのような協業が進む?
すでに、毎日のようにお互いの社員が行き来して人材交流をしています。共同研究から新たな試作品も生まれてくるでしょう。たとえば体が疲れやすい時に効くサプリ、あるいはキリンが得意とする免疫機能を持った素材で共同開発していくことも考えられます。
また、販売インフラの相互乗り入れも重要です。我々にはキリンビバレッジの自動販売機がある。共同開発した飲料があれば自動販売機に入れられる。ファンケルも直営ショップをたくさん持っており、マーケティングに長けているので、相乗効果は高いですね。
また今年2月には、アミノ酸研究で知られる協和発酵バイオの子会社化(投資額は1280億円)も発表しました。こちらの商品はサプリの「オルニチン」や「アルギニンEX」など通販が主体。うまく棲み分けができていくでしょう。
──ファンケル、協和発酵バイオ、キリンホールディングスのヘルスサイエンス事業部の売上高を合算すると約2200億円になる。今後、統合の可能性はありますか?
まずは、両社のシナジーを上げていくことが重要ですので統合の話はそれからです。しかし、シナジーを上げていくために、一体になって取り組んでいく覚悟を持っておりますし、そのほうが経営効率も研究成果も上がるはずです。
その際、「医と食をつなぐ事業」の中心的な役割をファンケルに担ってもらうことになると考えています。
【プロフィール】いそざき・よしのり/1953年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1977年キリンビール入社。1988年米コーネル大学ホテル経営学部に留学。1999年キリンホテル開発運営の「ホップインアミング」総支配人。2004年比サンミゲル取締役、2007年キリンHD経営企画部長などを経て、2012年キリンビール社長。2015年3月より現職。
●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2020年1月3・10日号