──今年8月、サプリメントや無添加化粧品で知られるファンケルとの資本業務提携を発表し、ファンケルに33%を出資(投資額は1293億円)しました。
キリングループは今年2月に将来の成長に向けて「医と食をつなぐ事業」を立ち上げ、健康領域に大きく舵を切っていくという長期経営構想を発表したばかり。今後、積極的に「健康」の領域に踏み込んでいかなければキリンの将来はないという思いがありました。
1994年をピークに、ビールの販売数量は3分の1以上落ちてしまっている。また、これからマーケットの中心になる10代、20代の方々の消費性向を分析すると、アルコール飲料への興味が薄いことは明らかです。
さらに、WHO(世界保健機関)がアルコールへの規制を強めているという世界的なトレンドがあります。未来を見据えれば酒類ビジネスだけにしがみついていてはいけない。とはいっても、まったく畑違いの事業はできません。
キリングループには、酒類や飲料会社のほか、祖業であるビールの醗酵バイオ技術がベースにある協和キリンという医薬品メーカーがあります。そういうバックグラウンドがグループにあったからこそ、プラズマ乳酸菌といった独自素材も世に出せた。
その成功体験もあり、未病・予防を司る健康領域の強化こそ、今後の生きる道だと考えたわけです。
しかし、その領域を確立するには時間がかかる。その足がかりとしての大きな一歩がファンケルとの資本業務提携です。
もともと魅力的な企業だと思っていたファンケルの創業者・池森賢二さんとお会いする機会を得たのがいいご縁となりました。池森さんは創業者一族の株をお集めになられて、その株式をすべてキリンに譲渡するという、大変な決断をしてくださった。