「禁酒宣言」をするかしないか、悩んだと語る町田さん
──物事にはプラスとマイナスがあるということですね。他に良かった点は?
町田:脳の働きがスムーズになった気がします。毎日酒を飲んでいた頃は、飲んでない時間でも思考がいくらか寸断されていた気がするんですが、今は、例えば文章を書いていて思いつくことや、本を読んで理解できることの領域が広がったり、深くなったんですね。思いつきや理解が線的ではなく、立体化したというか。
でもこれは、あくまで僕の体感であって、数値化して証明できることではない。単なる気のせい、かもしれない(笑)。それでも仕事がはかどるようになった気がしています。
◆「禁酒宣言」をしたほうがいいのか?
──町田さんはお酒をやめた後、「禁酒宣言」するかどうかで悩まれています。周りの応援、あるいは誘惑は、良くも悪くも、禁酒の成否を左右しそうです。
町田:宣言しないと孤独な戦いになる反面、宣言してしまうとそれがプレッシャーになって、プレッシャーに押しつぶされて結局飲む、そして信用を失う……ということになりかねない。どちらが向いているかは性格によるでしょうね。あと、その人の環境にもよりますね。僕の場合は、人との接触が少ない生活をしてますから宣言をしなくても大丈夫でしたけど、会社員で同僚としょっちゅう飲んでいたような人だと、やめたと言わないと、どうしたの? 具合悪いの? ってなりますからね。
──周囲の影響力という点では、禁酒の方法として「禁酒会」に入るべきか、入らざるべきかの考察も面白かったです。「組織は維持することが最大の目的になることがある」という一文は、さまざまな「会」に共通する真理だと思いました。
町田:自分は禁酒だけを求めて入会しても、こうした会には、むしろ人間的なかかわりを求めて入ってくる人もいます。そういう人に、例えばプライベートな質問をされたとする。禁酒のために来てるんだから、酒に関係ないことは一切聞くな、とはなかなか言えませんよね。人の集まるところには必ず人間関係のストレスが発生するものです。
仲間がいたから禁酒できたという人ももちろんいるでしょう。一方で僕のような、組織に属するのが好きじゃなくて、どちらかというと一人で生きてきたような人間に禁酒会は向かないと思った。じゃあ、そういう人間がどうやって酒をやめられるかを、考えていったわけです。