ライフ

ノザキのコンビーフ「枕缶」との別れをどう捉えるべきか

オフィシャルホームページより

 生活に根ざし広く親しまれてきた商品が“変貌”する瞬間は、さまざまな思いが去来するものだ。コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
 世の中は少しずつ、そして着実に変わり続けています。1月15日、不意を突かれるショッキングなニュースが飛び込んできました。国産コンビーフの始祖であり、日本におけるコンビーフの代名詞といっても(ライバル会社以外は)差し支えない「ノザキのコンビーフ」が、枕缶での販売をこの春で終了してしまいます。

 あの台形の缶がじつは「枕缶」という名前だったことは、今回のニュースで初めて知りました。野崎産業(当時)がコンビーフを発売したのは1948(昭和23)年、枕缶の採用は1950年。面積が大きい底側から肉を詰めることで、缶の中の空気を抜き、保存性を高める効果があるとか。しかし、製缶の製造ラインが限界に来ていることから、パッケージのリニューアルを決断。3月16日から「アルミテック缶」に生まれ変わるそうです。

 このニュースが流れるや否や、ネット上には枕缶との別れを惜しむ声があふれました。たぶんめったにコンビーフを食べない人も騒いでいたかと思いますが、それだけ日本人の生活に根付いた定番商品ということでしょう。たしかに、あの「巻き取り鍵」(この名称も初めて知りました)を使ってキコキコと開けるときのワクワク感が味わえなくなるかと思うと、ちょっと寂しい気もします。

 でも大丈夫。私たちはこうした別れを何度も経験してきました。3年ほど前には東日本で明治の「カール」が買えなくなり、去年は森永製菓の「森永チョコフレーク」が生産を終了しましたが、私たちは強く生きています。「ノザキのコンビーフ」が枕缶ではなくなってしまう春以降も、変わらない日常が続いていくでしょう。

 いっぽうで楽しみなこともあります。新パッケージが定着したころに、若者や子どもや孫に向かって「昔はコンビーフと言えば、小さな巻き取り鍵が付いてて、キコキコ巻いて開けたんだよ」と語れば(もしかしたら少しは)感心してもらえるかも。同世代と昔の開け方で盛り上がるのも、また楽し。

 今すぐにできることもあります。思い出してください。かつて私たちは、缶詰を開けるときに「缶切り」を使っていました。しかし、1980年代頃から缶詰の世界では「フルオープンエンド」というタブを引っ張って開ける方式が主流になり、今では缶切りが必要な缶詰にはまずお目にかかれません。

 台所の引き出しの奥を探れば、きっと缶切りが出てくるはず。何かの機会に缶詰を開けるチャンスがあったら、わざわざ缶を裏返して「やっぱり缶詰は缶切りで開けたほうが旨いよな」などと言いつつ、華麗な缶切りさばきを披露するのはどうでしょうか。若者や子どもに缶切りを使わせて、使い方がわからずに戸惑う様子を見るのも一興です。

関連記事

トピックス

部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
2021年ドラ1右腕・森木大智
《悔しいし、情けないし…》高卒4年目で戦力外通告の元阪神ドラ1右腕 育成降格でかけられた「藤川球児監督からの言葉」とは
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
注目される次のキャリア(写真/共同通信社)
田久保真紀・伊東市長、次なるキャリアはまさかの「国政進出」か…メガソーラー反対の“広告塔”になる可能性
週刊ポスト
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
この笑顔はいつまで続くのか(左から吉村洋文氏、高市早苗・首相、藤田文武氏)
自民・維新連立の時限爆弾となる「橋下徹氏の鶴の一声」 高市首相とは過去に確執、維新党内では「橋下氏の影響下から独立すべき」との意見も
週刊ポスト
元・明石市長の泉房穂氏
財務官僚が描くシナリオで「政治家が夢を語れなくなっている」前・明石市長の泉房穂氏(62)が国政復帰して感じた“強烈な危機感”
NEWSポストセブン
新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン