国内

外国人犯罪のプロが予測していた「ゴーンは確実に飛ぶ」

ゴーン氏の会見は休憩を挟んで2時間以上に及んでいる

ゴーン被告の逃亡は予想されていた?

 警察や軍関係の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回はレバノンに逃亡中のゴーン被告について、刑事たちがホンネを明かす。

 * * *
「ゴーンは飛ぶ」

 これが、外国人犯罪捜査の経験がある刑事らの共通認識だったようだ。

 警視庁には外国人犯罪を専門に扱う刑事がいる。ゴーン被告が保釈されるというニュースが報じられた時、国籍や民族を問わず日本国内で外国人が犯した犯罪を捜査してきたベテラン刑事らが顔を合わせる機会があった。そこにいた全員の意見は同じだった。

「保釈されれば、ゴーンは確実に飛ぶ」

 警視庁に限らず、外国人による犯罪を取り調べたことのある者なら、みんなそう考えたはずだと元刑事は断言する。

 理由は簡単だ。

「自分の国があるやつは逃げると考えるのが普通です。彼らは日本人ではなく、帰る国がある。日本に居着いていたり、家族全員が日本にいるなら別ですが」

 中には「保釈されて3日以内に飛ぶ」と予想した元刑事もいたという。保釈後3日以内というのははずれたが、まんざら当たっていないわけでもなかった。

 この予想には「監視がなければ」という条件がついていたからだ。保釈され、監視がなければ3日以内に飛ぶ、元刑事はそう予想したのだ。行動が制限されていなければ、それぐらい迅速に逃亡すると考えたのである。

 実際、ゴーン被告がレバノンに逃亡したのは、日産自動車が手配していた警備会社が監視を中止した当日だ。弁護人だった弘中淳一郎弁護士がゴーン被告から委任状を受け、監視をしていた警備会社を刑事告訴すると表明し、業者は監視を中止した。監視がなくなった当日、ゴーンは元刑事の予想通り飛んだのである。

 ゴーン被告の保釈は「証拠隠滅のおそれがある」として2度却下された。しかし「無罪請負人」弘中弁護士と「レジェンド」と呼ばれる高野隆弁護士が10の保釈条件を出し、3回目で保釈が許可された。パソコンの使用制限、メールやインターネットの利用禁止、監視カメラの設置などその条件は厳しいと言われたが、元刑事は首を横に振る。

「保釈条件が甘かった。相手は日本人ではない、裁判所はそこをわかっていなかったんです」

 裁判所の最近の傾向として、早期保釈が増えていたのは確かだ。またゴーン被告の長期身柄拘束を人質司法と揶揄し、批判する記事も増えていた。だが、早期保釈された被告のほとんどは日本人である。

「保釈条件には、24時間の監視を自費でつけるという項目が必要だった。裁判所は証拠隠滅の中に逃亡が含まれるとは解釈しない。そこが大きな間違いです」

 また、「飛ぶなら船だ」とも言われていたという。ゴーン被告が迅速に逃亡する手段として予想されたのは、貨物船だったらしい。

「羽田や横浜あたりの港から出る外国船籍の貨物船に、まぎれて乗り込めばわからない。1000万円も渡せば、話に乗るやつらはいくらでもいる」

 貨物船が真っ先にあがったのは、パスポートの問題があるからだ。外国人犯罪者が保釈される場合、保釈条件として弁護士がパスポートを預かるケースがほとんどだ。逃亡しようとする外国人犯罪者の手元にパスポートがなくても、外国船籍の貨物船なら乗船する船員に対していちいちパスポートを確認しないだろう。

 ゴーン被告も当然、パスポートは所持していないと思われていた。だがゴーン被告の弁護団は、旅券は透明のケースに入れた状態で被告に携帯させていた。逃亡のお膳立てをしたと言われても仕方がない。

「さすがにプライベートジェットとは思わなかった。船と考えるのが一般人の思考だ。金持ちの考え方は違う」

 また、国籍によっても保釈後、自国に逃亡するか否かは異なるという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

愛されキャラクターだった橋本被告
《初公判にロン毛で出廷》元プロ棋士“ハッシー”がクワで元妻と義父に襲いかかった理由、弁護側は「心神喪失」可能性を主張
NEWSポストセブン
水谷豊
《初孫誕生の水谷豊》趣里を支え続ける背景に“前妻との過去”「やってしまったことをつべこべ言うなど…」妻・伊藤蘭との愛貫き約40年
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年9月28日、撮影/JMPA)
「琵琶湖ブルーのお召し物が素敵」天皇皇后両陛下のリンクコーデに集まる称賛の声 雅子さまはアイテム選びで華やかさを調節するテク
NEWSポストセブン
世界選手権でもロゴは削除中だった
《パワハラ・セクハラ問題》ポーラが新体操日本代表オフィシャルスポンサーの契約を解除、協会新体操部門前トップが悔恨「真摯に受け止めるべきだと感じた」
週刊ポスト
辞職勧告決議が可決された瀬野憲一・市長(写真/共同通信社)
守口市・瀬野憲一市長の“パワハラ人事問題”を市職員が実名告発 補助金疑惑を追及した市役所幹部が突然の異動で「明らかな報復人事」と危機感あらわ
週刊ポスト
新井被告は名誉毀損について無罪を主張。一方、虚偽告訴については公訴事実を全て認めた
《草津町・元町議の女性に有罪判決》「肉体関係を持った」と言われて…草津町長が独占インタビューに語っていた“虚偽の性被害告発”
NEWSポストセブン
当時の事件現場と野津英滉被告(左・時事通信フォト)
【宝塚ボーガン殺人事件】頭蓋骨の中でも比較的柔らかい側頭部を狙い、ボーガンの矢の命中率を調査 初公判で分かった被告のおぞましい計画
週刊ポスト
田久保真紀市長が目論む「逆転戦略」は通用するのか(時事通信フォト)
《続く大混乱》不信任決議で市議会を解散した伊東市の田久保真紀市長 支援者が明かす逆転戦略「告発した市議などを虚偽告発等罪で逆に訴える」
週刊ポスト
青ヶ島で生まれ育った佐々木加絵さん(本人提供)
「妊活して子どもをたくさん産みたい…」青ヶ島在住の新婚女性が語る“日本一人口が少ない村”での子育て、結婚、そして移住のリアル
NEWSポストセブン
祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《夫にピッタリ寄り添う元モー娘。の石黒彩》“スマホの顔認証も難しい”脳腫瘍の「LUNA SEA」真矢と「祭り」で見せた夫婦愛、実兄が激白「彩ちゃんからは家族写真が…」
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
《目撃者が明かす一部始終》「後ろめたいことがある人の行動に見えた」前橋・女性市長の“ラブホ通い詰め”目撃談、市議会は「辞職勧告」「続投へのエール」で分断も
NEWSポストセブン
本誌記者の直撃に答える田中甲・市長
【ダミー出馬疑惑】田中甲・市川市長、選挙でライバル女性候補潰しのために“ダミー”の対立女性候補を“レンタル”で擁立した疑惑浮上 当の女性は「頼まれて出馬したのか」に「イエス」と回答
週刊ポスト