「こういう話があったら読みたいなと空想する癖があるんです。とくに地理的に壮大な話にひかれます。異なる文化同士が接するときの溶け合っていく様子とか、葛藤とか、混ざった具合に昔からすごく興味がありました」
資料を集め、史実をもとに、ほとんどが実在の人物という小説を書き上げた。川越さんが創作した魅力的な女性たちも登場する。
「人類の半分は女性なのに歴史の本、とくに政治史にはあまり出てきません。歴史は人の思いや行動の集積です。男の話ばかりしていると、その半分しか描けないことになってしまいますからね」
子供の頃から歴史が好きだった川越さんは大学の史学科に入学したものの中退。アルバイトをしながらロックバンドでベースを弾いていた。30才で会社員になり、時間に余裕ができた4年前に小説を書き始めた。筋トレを始めるような軽いノリだったという。
川越さんは国家に翻弄される人や少数民族に温かな眼差しを向ける。それは異文化に不寛容な今の世の中への問いかけでもある。
「書きながら思っていたのは『みんな仲よくしようよ』ということ。いろいろ考えたんですけど、この言葉にしかならへんなと思って」
居丈高な軍人を含め登場人物は全員好きだという。誰もがそれぞれの事情を抱え懸命に生きている。胸が熱くなる冒険譚だ。
■取材・構成/仲宇佐ゆり
※女性セブン2020年2月6日号