──東京では大手町や丸の内、有楽町、渋谷、品川などでも再開発が進んでいる。競争や棲み分けをどう考えるか。
辻:ヒルズのような建物が、すべての街になければいけないということではなく、丸の内のようにビジネスに特化したエリアがあってもいいし、IT企業が集積する渋谷のような街があってもいい。それが差別化にもなるでしょうし、選択肢があればあるほど都市は強くなる。様々な特徴を持った街が集合することが東京の強みになれば理想的です。
実は、東京の中でのパイの奪い合いはあまり重要ではない。むしろ問題なのは東京から企業が海外に出ていってしまうことです。我々が戦っているのは東京の他のエリアではなく、シンガポールや香港、上海、ロンドン、ニューヨークといった世界の主要都市です。
──その中で、森ビルの再開発の今後の展望は?
辻:六本木ヒルズに隣接する「六本木五丁目プロジェクト」は、これから都市計画の手続きを進める段階ですが、大きな可能性を感じている。
また虎ノ門ヒルズの界隈には、まだまだ老朽化した小規模なビルが集積しているエリアもありますから、開発エリアが残っている。
今後の都市間競争において、東京に何がもっと必要で、何をどう直していくべきなのか、腰を据えて考えていきます。
【PROFILE】
●辻慎吾(つじ・しんご)/1960年広島県生まれ。1985年横浜国立大学大学院工学研究科修了後、森ビル入社。2006年取締役(六本木ヒルズ運営室長兼タウンマネジメント事業室長)、2008年常務、2009年副社長を経て2011年6月より現職。
●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト=かわの・けいすけ):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2020年2月7日号