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2020.02.09 07:00  女性セブン

京アニ事件の遺族が提起する「実名報道」「報道の自由」

カラーコーディネーターの資格を生かし、彩色一筋だった幸恵さん(写真/共同通信社)

 36人が亡くなり、33人が負傷した京都アニメーションの放火殺人事件。殺人などの容疑で逮捕状が出ている青葉真司容疑者(41才)は全身に重度のやけどを負い、大阪府内の病院から京都市内の病院に転院し、治療とリハビリに当たっている。

 この事件においては、マスコミでの「実名報道」について課題を残した。半数以上の遺族が匿名での報道を希望したが、事件で犠牲となった津田幸恵さん(享年41)の父・伸一さん(69才)はこう語る。

「今回、それぞれのご家族が名前の公表について用心したのも、マスコミに原因があると思います。発表することによってマスコミが必ず来る。それが怖いから拒否する人が出てきたんですよ。私としては、(娘の)名前を公表してもらってもいいけど、取材は別。それを間違えないでもらいたいです」

 実名報道の意義や可否については、さまざまな意見がある。

「名前には訴求力がある」と言うのは、名付けに詳しい京都文教大学の小林康正教授だ。

「名前は固有名詞の最も典型的なものとされています。その固有名詞の本来の意味は、そこにしかないもの、ほかに置き換えできないものです。固有名詞があることによって、それが事実であることの証明になる。

 京アニの事件では石田敦志さん(享年31)のお父さんが、相模原の津久井やまゆり園の事件では被害者である美帆さんのお母さんが匿名に対する意見を表しましたが、これは、事実を立ち上げる力が実名にある、と考えていらっしゃるからだと思います。事実を伝えるのが根幹である報道において、実名は非常に大きな力を持つんだろうと思います」

 一方で、ネットが発達した社会ではその力の大きさゆえ、名前の扱いには敏感にならざるを得ないともいう。

「昨今は、自分の名前は“いちばん重要なプライバシーである”という意識が強くなっています。その背景には、メディアスクラムの影響もあるでしょう。また、“忘れられる権利”が注目されていますが、ネットに一度拡散されたら消えることがない、“デジタルタトゥー”に対する恐怖もあるでしょう。実名や顔写真が公になると、ネット上では、生い立ちから学歴、職歴まで、次々とプライバシーが暴かれていく。その弊害から匿名を求める人が増えてきたのではないでしょうか」(前出・小林さん)

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