京都アニメーション一覧

【京都アニメーション】に関するニュースを集めたページです。

事件現場は解体工事が行われた(共同通信社)
京都アニメーション 事件後の最新作はアニメではなく小説
 36人の犠牲者を出した京都アニメーションの放火事件。そのショックは未だに尾を引いている。アニメジャーナリストの渡辺由美子氏が語る。「今年1月に公開予定だった映画『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は事件の影響で4月公開となったのち、さらに新型コロナで再延期になってしまった。放火被害にあった第1スタジオにいた負傷者も職場復帰して、4月公開に合わせてすでに完成させていました。映画は、戦争後に手紙の代筆業に就いた主人公・ヴァイオレットが仕事を通して戦争で傷ついた人々の心を癒やすという舞台設定。現在の京アニの境遇と重なる部分もある作品だけに延期は残念です」 それでも京アニは再興への道を着実に歩み始めている。今年1月には、同社が1992年から制作過程の一部に参加していたアニメ『クレヨンしんちゃん』の制作に再び参加し始めたことが話題となった。4月24日には、同社が発行する小説レーベル「KAエスマ文庫」から新作ライトノベル『典薬寮の魔女』が刊行され、5月にも『サクラの降る町』の発売が予定されている。「これまで京アニは同レーベルの小説を原作とする数々のヒットアニメを生み出してきました。『中二病でも恋がしたい!』や、公開延期となった『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』もその1つで、今回の新作小説が将来、新作アニメになる可能性もある」(同前) 完全新作アニメを発表──それこそが本当の京アニ復活の日だろう。※週刊ポスト2020年5月8・15日号
2020.05.04 07:00
週刊ポスト
(共同通信社)
かつて報道は加害者追ったが、人権尊重から被害者取材に変化
 2019年7月18日、アニメ制作会社『京都アニメーション』(京都市伏見区)の第1スタジオに男が侵入し、ガソリンをまいて放火。この京アニ事件では、被害者の実名報道について議論が起こった。 犯罪の被害者と加害者、それぞれについての報道はどう変わっていたのだろう。「被害者学」の第一人者で元常磐大学学長の諸澤英道さんに聞いた。「かつては、阿部定事件(1936年、東京で発生。割烹料理店の中居だった阿部定が、店の主人で愛人の男性を殺害した猟奇的事件)や永山則夫連続射殺事件(1968年、当時18才の永山則夫が4都道府県で4人を殺害した事件)など、事件に犯人の名前がついていたことに象徴されるように、マスコミは加害者側を追いかけていました。 ところが、加害者の人権を尊重すべきだと弁護士がガードし始めてから、加害者への取材が難しくなったため、被害者側の取材に移行したという経緯があります」 1980年代になると、過剰な被害者報道が問題になった。「『富山・長野連続女性誘拐殺人事件』(1980年、富山県で発生。女子高生、20才のOLが相次いで誘拐・殺害された事件)、『女子高生コンクリート詰め殺人事件』(1988年、東京で発生。女子高生が40日間にわたり拉致監禁の後に殺害されコンクリート詰めにされ遺棄された事件)などがそうでしたが、事実と反して、被害者に落ち度があるように報じられたり、被害者のプライバシーを暴く報道に非難の声があがりました。1980年代は報道のあり方が問題になった転換期です」 1990年代に変化の兆しが見えてきて、2000年に発覚した事件で大きな変化があったという。「新潟少女監禁事件という、小学4年生の女の子が連れ去られ、約10年にわたって監禁されていた事件です。この時にマスコミは、救出された被害者の自宅から半径数百m以内には近づかない、という報道協定を結びました。被害女性の周辺取材を控えたことは大きな変化です」 しかし、今も事件や事故、災害が起きるたびにメディアスクラムは起こる。それが「近年のメディア不信の原因の1つになっている」と指摘するのは、マスコミ論が専門の、元専修大学教授で文芸評論家・権田萬治さん。「多くのマスコミが一斉に殺到し、事件や事故の当事者やそのご家族の社会生活を妨げ、精神的苦痛を与えてしまうことがメディアスクラムです。あまりに過熱した取材が報道被害を生み、それがメディア不信へとつながります。 代表取材(報道陣の中から選ばれた代表のみが取材にあたり、他の報道陣にその内容を伝えること)にしたり、時間や記者の人数を制限するなどして、メディア側も解決策を探っていますが、必ずしも充分とはいえません」 前出の諸澤さんは解決策の1つに、欧米で行われている「スポークスマン制度」を挙げる。「大事なのは被害者のためのスポークスマン=代弁者が必要だということ。例えば、弁護士は適任でしょう。今の日本で問題なのは、被害者情報を警察が一括で掌握していることです。 欧米諸国は違います。例えばアメリカでは、国の予算で被害者を支援する民間の組織があります。多くの州の警察署内に“支援者の部屋”があって、事件が起きると警察官とともに現場に臨場し、被害者に寄り添い、支援します。支援者は警察に対して文句や注文もつけますし、スポークスマンの役割を果たしています。 日本にはそういう制度はありません。警察組織の中に被害者支援要員をつくり、警察官がその役割を担っていますが、あくまで警察官ですから代弁者にはなり得ません。また、被害者支援センターというものが各都道府県にありますが、被害者からの信頼が非常に低く、期待するような働きにはなっていません。 欧米の被害者支援センターのスタッフは、半分以上が元被害者です。事件や事故から生活を取り戻す力になりたいと支援を買って出た人ですから、被害に遭った人の気持ちがよくわかる。その点、日本の被害者支援センターは、センターの方針によるのでしょうが、元被害者はほとんどいません。被害者のなんたるかを知識として知っていても、実際には不満の声が続出しています。日本における被害者支援センターが欧米のそれのように、すぐに被害者に寄り添うスポークスマン足り得れば、いくつかの課題は解消される可能性はあると思います」※女性セブン2020年2月20日号
2020.02.12 07:00
女性セブン
(共同通信社)
京アニ放火事件で亡くなった女性の父、「優しい娘でした」
 2019年7月18日、アニメ制作会社『京都アニメーション』(京都市伏見区)の第1スタジオに男が侵入し、ガソリンをまいて放火。 同社社員の69人が被害に遭い、36人が死亡した。出火直後に1階から3階まで吹き抜けのらせん階段を通じて炎と煙が一気に広がり(充満し)、被害が拡大したとされる。 津田幸恵さんは、高校卒業後にアニメ専門学校に進み、卒業後、同社に入社。着色を担当していた。 入社を機に、兵庫県加古川市の実家を離れ、京都で暮らしていた。幸恵さんは4人きょうだいの上から2番目で長女。兄1人、妹2人。一昨年2月、母を病気で亡くし、実家では父・伸一さんがひとり暮らし。「幼い頃はぜんそくで外で遊ぶことが少なく、活発というよりおとなしい子でした。小学生の頃は、当時流行していたアニメの『るろうに剣心』をよく描いてましたね。 京都アニメーションに入社してからは充実した日々を過ごしていたのか、顔色も表情もどんどん明るくなったのを覚えています。『クレヨンしんちゃん』のエンドロールに幸恵の名前が出て、家内と毎週、それを見逃さんようにするのが楽しみでした。家を出てからも家族のことをいつも気にかけてくれた、優しい娘でした」(伸一さん)※女性セブン2020年2月20日号
2020.02.11 07:00
女性セブン
カラーコーディネーターの資格を生かし、彩色一筋だった幸恵さん(共同通信社)
京アニ事件の遺族が提起する「実名報道」「報道の自由」
 36人が亡くなり、33人が負傷した京都アニメーションの放火殺人事件。殺人などの容疑で逮捕状が出ている青葉真司容疑者(41才)は全身に重度のやけどを負い、大阪府内の病院から京都市内の病院に転院し、治療とリハビリに当たっている。 この事件においては、マスコミでの「実名報道」について課題を残した。半数以上の遺族が匿名での報道を希望したが、事件で犠牲となった津田幸恵さん(享年41)の父・伸一さん(69才)はこう語る。「今回、それぞれのご家族が名前の公表について用心したのも、マスコミに原因があると思います。発表することによってマスコミが必ず来る。それが怖いから拒否する人が出てきたんですよ。私としては、(娘の)名前を公表してもらってもいいけど、取材は別。それを間違えないでもらいたいです」 実名報道の意義や可否については、さまざまな意見がある。「名前には訴求力がある」と言うのは、名付けに詳しい京都文教大学の小林康正教授だ。「名前は固有名詞の最も典型的なものとされています。その固有名詞の本来の意味は、そこにしかないもの、ほかに置き換えできないものです。固有名詞があることによって、それが事実であることの証明になる。 京アニの事件では石田敦志さん(享年31)のお父さんが、相模原の津久井やまゆり園の事件では被害者である美帆さんのお母さんが匿名に対する意見を表しましたが、これは、事実を立ち上げる力が実名にある、と考えていらっしゃるからだと思います。事実を伝えるのが根幹である報道において、実名は非常に大きな力を持つんだろうと思います」 一方で、ネットが発達した社会ではその力の大きさゆえ、名前の扱いには敏感にならざるを得ないともいう。「昨今は、自分の名前は“いちばん重要なプライバシーである”という意識が強くなっています。その背景には、メディアスクラムの影響もあるでしょう。また、“忘れられる権利”が注目されていますが、ネットに一度拡散されたら消えることがない、“デジタルタトゥー”に対する恐怖もあるでしょう。実名や顔写真が公になると、ネット上では、生い立ちから学歴、職歴まで、次々とプライバシーが暴かれていく。その弊害から匿名を求める人が増えてきたのではないでしょうか」(前出・小林さん) 今、日本の実名報道のあり方が過渡期にさしかかっている、とマスコミ論が専門の元専修大学教授で文芸評論家・権田萬治さんは指摘する。「日本ではこれまで犯罪容疑者の氏名が匿名か実名かについて大きな問題となったことはありますが、被害者の扱いがここまで注目されることはなかったと思います。京アニ事件や相模原事件などでは、被害者の多くが匿名扱いになりました。 これは、事件そのものが前代未聞の残酷なもので、死傷者も多数だったこと、今もなお病床におられるかたがおり、メディアへの恐怖感が捨てきれないこと、実名が明かされるとプライバシーが暴かれ、SNSなどに匿名の無責任な情報やコメントが流されるのではないかという不安があること、などが背景にあったと思われます。 日本のメディアでは被害者も含めて、原則、実名報道が基本です。その理由は、国民の知る権利に応え、記事の正確さや説得力を担保するためとか、公権力の監視のため、などとされています。 今回の場合、事件の重大さと特異性による例外的な事例で、匿名扱いもある程度やむを得ないと考えますが、一方で、被害者を実名、写真入りで扱ってほしいと要望するご家族も現れるなど新しい動きも見られます。 もともと日本は、『桜を見る会』の招待者名簿問題などに象徴されるように、隠す文化が支配的です。アメリカなどのように物事をオープンにして解決する文化と対照的ですが、日本でもやっと新しい動きが出てきたと私は実感しています。被害者の実名・匿名の問題も、被害者側が社会に積極的に問題を訴えていくという視点から、今後考えていく必要があるのではないでしょうか」 欧米では半世紀以上も前から被害者問題が議論されてきたが、日本で被害者に目が向けられたのは、全国犯罪被害者の会『あすの会』(2018年解散)が2000年に設立されて以降のことだ。同会の顧問を長年務めてきた、「被害者学」の第一人者で元常磐大学学長の諸澤英道さんはこう語る。「欧米では、1950年代後半には被害者問題への取り組みが始まり、1960年代には運動が起こり、1970年代には法整備が始まります。国連でも議論が始まり、1985年に通称・国連被害者人権宣言が採択されます。日本は『あすの会』が設立されたのを機に、ようやく目が向けられるようになったばかりです」 その諸澤さんは、被害者報道は匿名で、というのが原則だと説く。「加害者は実名、被害者は匿名というのが国際的なコンセンサスです。実名報道を考える時には公共性があるかどうかで判断しますが、事件や加害者の情報は“公共の利害に関する情報”だが、被害者情報には公共性がないというのが国際的な原則です。 日本では、2004年に成立した『犯罪被害者等基本法』の基本理念に『個人の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利がある』と書かれています。被害者は一人ひとり違い、知る権利があると同時に、プライバシーと名誉を守られる権利があるのです」(諸澤さん) 一方で、国連の取り組みは実名報道できる社会になることが目的だという。「今の日本でなぜ匿名を希望するかというと、実名を出してはあまりに不利益を被るから。ですが、アメリカでは被害者も加害者の関係者なども顔出しで取材を受けたり裁判で証言したりできる。社会全体が温かく優しいため、隠す必要がない社会だからできること。 国連の究極の目的は、人間の尊厳を大切にする社会。そうなった暁には、匿名である必要はないんです。そうなっていない社会だから被害者に不利益が時として起こる。今の日本はまだその状態にあるため、実名であれ匿名であれ、被害者や遺族一人ひとりの意思を尊重すべきです」(諸澤さん) 津田さんも事件を通じて、「言論の自由、報道の自由はありますが、自分の自由で人の権利を侵したり自由を脅かすことは暴力だと思います」と語っている。※女性セブン2020年2月20日号
2020.02.09 07:00
女性セブン
津田幸恵さんの父・伸一さん(撮影/伏見友里)
京アニ放火事件、遺族が呆れる「無礼で無遠慮な取材者たち」
 36人が亡くなり、33人が負傷した京都アニメーションの放火殺人事件から半年。現場となった第1スタジオは、高く組まれた足場とグレーの防音シートで覆われ、この1月から解体工事が始まった。 殺人などの容疑で逮捕状が出ている青葉真司容疑者(41才)は全身に重度のやけどを負い、大阪府内の病院から京都市内の病院に転院し、治療とリハビリに当たっている。「犯人には何の感情もありません。考えたり思ったりしても何の意味もありませんから」 そう話すのは、事件で犠牲となった津田幸恵さん(享年41)の父・伸一さん(69才)。 幼い頃から絵を描くのが得意だった幸恵さん。念願の京都アニメーションに入社して20年、仕上げの彩色を担当し、人気作品を長年手がけてきた。帰省のたびにいろいろなお土産を買ってきてくれる気遣いがうれしく、忙しくも充実している様子を幸恵さんの表情から感じていた。 そんな津田さんの生活は昨年の夏を境に、すべてが一変した。 *「ほんまやったらあと2、3年は働こうと考えてたけど、もう引退です」 電気設備設計の仕事をしている津田さんは県外の現場に出かけることも多く、泊まりこみも少なくない。まだまだ働けるが、引退を決意した。「近所に出かけるぐらいはいいけども、長距離となるとダメ。運転しながら、ふと幸恵のことに思いが及んでしまうんです。 そうすると、苦しくなるほど涙が出て、前が見えなくなってしまってね。運転中では事故になりかねないでしょ? もうすぐ運転免許の更新があることですし、返納することに決めたんです。車が運転できなければ、これまでのように仕事はできないんでね。もういいですわ」 生活スタイルも変わった。買い物は客足の少ない平日の午前中。最近はネットで済ませることも多くなったという。「人のいる場所に出かけることがしんどいんです。事件直後は、朝、目が覚めても何もする気が起きず、何も考えられない毎日。朝から何も食べてないのに、夜になってもお腹が空かない。横になっても、寝てるか寝てないかもわからないような感覚。もちろん、疲れがたまって落ちるように寝てはいたんでしょうけど、あの頃のことは覚えていません」 津田さんへのインタビューを通して、「メディアスクラム」「実名報道」について考えてみたい。◆メディアスクラム──無礼で無遠慮な取材者が一気に押し寄せた 事件翌日から殺到した取材に、津田さんは断ることなく対応してきた。その理由は、「だってここまで来てるのに、追い返すのも気の毒でしょう」 実際、2か月間で37社に及ぶ取材を受けてきたが、事件報道に対する疑問をいまだ解消できないでいるという。「私がわからないのは、報道する意義です。それについて取材者に問うと、『二度と同様の事件が起きないようにするために事実を報道する』と言うかたもいます。でも、それが何の役に立つの? 教訓になるの? 今回の事件を報じて何か抑止になるの? 抑止するなら犯人側のことを報じればいいんじゃないの? そう思います。 取材に来られたかたたちはそれぞれ、事件報道への信念や思いを話してくれました。そういう姿勢で取材をされているということは理解できましたが、私が納得できる答えはありませんでした」 大きな事件・事故が起こった直後、被害者や遺族が直面させられるのがメディアスクラムだ。「事件当日、私は自宅にいました。10時半頃に事件が起きて、テレビで報じ始めたのが昼前後やったかな。それからは幸恵の携帯電話にかけたり会社に問い合わせたり、落ち着かないまま過ごして」──当日、現場に向かわれましたか?「行ってくれたのは幸恵の妹です。京アニの本社に行くと、同じように駆けつけたご家族が何組かいたそうです。 なんでもいいから事情を聞きたいとみな必死やった。何もわからないから現場に来てるのに、本社の外に出ると、堰を切ったように報道陣にワッと取り囲まれて質問攻め。タレントのゴシップを扱うのと同じようにライトで照らされ、マイクを突き出されて…たいへんやったそうです。 もっとね、不正を質すとか、最近であれば『桜を見る会』の疑問を問うためにやるならわかりますけど、取材のかたがたは政治家には腰が引けてるようにしか見えない一方で、事件の被害者にそんなことをするのかと。 その翌日、私が行った時も2組ほどご家族がいらっしゃいましたが、泣き崩れていました。心配や不安の極限にいる人たちに、まだ何もわかってないのに『今の気持ちは?』って聞かれても、心配で心配で仕方ないだけ。わかりきってるでしょう。そういうのは避けてほしいなと思いました」──津田さんが現地に向かわれたのは?「事件翌日、DNA鑑定のため、肉親のDNAを採取する必要があるという連絡を受けて、京都に向かいました。そして、第2スタジオに立ち寄った際に初めてテレビ局(NHK)の取材を受けたんです。 そして、『改めて取材をしたい』と、次の日の昼間に自宅に来られた。外がまっ暗になった頃にやっと取材が終わって、ホッとしていたらインターホンが鳴ったんです。 玄関を開けると今度は、カメラを手にした別のテレビ局の男性が1人で来ていました。『NHKに出てたから、うちの局でも“顔出し”をしてほしい』って言うんです。顔出しは断りましたが、話を始めた時に、また別のテレビ局のカメラマンが1人でやって来ました。2人とも肩に担ぐような大きなカメラで…あれやね、あの大きなカメラいうのは威圧感があるね。何を聞かれたかほとんど覚えてもないけど、疲れたことしか覚えてないわ」──その日から毎日?「新聞、テレビ、通信社、雑誌…と毎日です。入れ替わり立ち替わり、誰かしらがほぼ毎日。切り出しの言葉こそ、『このたびは…』と慎重ですけど、あとがひどい。『今のお気持ちは?』って皆さん聞く。そんなもん、言わんでもわかるやろと。それぐらい察してくれよと思いますよ。『事件についてどう思うか?』、『どんなお嬢さんでしたか?』、『小さい時は?』、そんなん、ワーワー言われて…そして最後にみんな、判で押したように聞くんです。『犯人には何を思うか?』、ズケズケ聞くなよ、と。でも、聞きたいんやろうね。それが仕事なんやろね。 中には、『上(上司)から言われて来たものですから』なんてかたもいましたよ。そんなの、ニュースや記事にしたいだけの取材じゃないですか。それなら何をしゃべっても意味がないんじゃないかと思ってしまう」◆遺影の位置を自分が撮りたい角度に変えたりもする──配慮に欠けた取材が少なくない?「取材のかたが撮影させてほしいと言えば、幸恵の写真や荷物を私は見せていました。断り切れないんでね。 で、一通り話したあとで、『遺影を見ながら、もう一度同じ話をしてください』って言うんです。そんな芝居みたいなことはね、嫌やったね。私は俳優やタレントじゃないんですから。 それから、自分が撮りたい角度に変えようと、遺影をいきなり勝手に動かすカメラマンもいた。遺影やお骨を無断で触るなんて…配慮が欠けているというより、気遣いそのものがないんです。 特にテレビ局の取材には抵抗がありましたね。わけのわからんペーペーを寄こすなと言いたい。若い人を派遣する会社の責任もあると思う。 あと、皆さん、しゃべる速度が速すぎる。相手の受け止め方を見もせずに、一方的にワーワー言ってくる。最初に名乗って、相手が落ち着いているようなら、これこれこういうことだけでもお伺いしたいと言って、了解をとってから話してほしい。こちらは心が傷んでいるんだから。その程度の気遣いができない記者を寄こさないでほしい。取材相手の状況や状態を考えられるだけの心を持ってほしい。 もちろん、そんな記者ばかりではありません。取材にならなくても来てくれて、落ち着いてまじめに話を聞いてくれるかたもいる。そういうかたにはこちらもきちんと話そう、そう思いました」※女性セブン2020年2月20日号
2020.02.07 07:00
女性セブン
まとめサイトは運営者も読者も……(イメージ)
まとめサイト運営者 「情報商材の被害者」でもある人が多数
 ニュースサイトのような見た目を装っていても、まとめサイト、トレンドブログと呼ばれるサイトは、出元が不確かな情報を確認もとらず、誤認しやすいように切り貼りしている。つまり信用に値しないのだが、SNSを経由して伝えられると、なぜか信じて拡散する人が少なくない。コロナウイルスによる新型肺炎にまつわるデマも同じように拡散され、自治体などが否定のアナウンスをする事態となった。対策が難しいと言われるまとめサイト運営者を相手どり、NHKが提訴したことが話題になっている。加害者として語られることが多いまとめサイトの運営者だが、実は被害者でもあるという矛盾した実態についてライターの森鷹久氏がレポートする。 * * * あの天下の公共放送「NHK」が、ネット上に数多存在する「まとめブログ」を訴えた── この裁判は、大企業や政治家が一般人の声を封じるために威圧や報復目的で起こす「スラップ訴訟」ではない。まとめサイトの悪質さに、放送界の巨人でさえ、ついに堪忍袋の緒が切れた、ということだ。「昨年発生した京都アニメーションの放火殺事件について、NHKが関与したかのような記事を掲載していたとして、NHKがまとめサイトの運営者に、損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴えを起こしました」 現役の在阪民放記者は驚きをもってこう話す。 ネットに掲載された内容をめぐる裁判は、まず発信者の連絡先を入手するために該当サイトのサーバ管理会社を相手に争い、そこで主張が認められて初めて、問題の掲載内容を発信した当事者と対峙できるという二段構えだ。まず発信者情報開示を目的とした裁判をサーバ管理会社と争い、次に発信者本人と掲載内容を争う。つまり、ひとつの案件で二度、裁判を行わねばならない。NHKも今回の件でサーバ管理会社を相手に裁判を起こし、2019年12月に情報開示を認める判決を得ていた。 当然だが、ひとつの事件で二度も裁判をするには時間も人手も、資金も必要なため、できれば避けたい事態なのは個人でも法人でも変わらない。にもかかわらずNHKが運営者の提訴に踏み切ったのは、「京アニ事件」に関してのネット上のデマは、はっきりいって「限度を超えていた」(前出の在阪記者)ためだという。「まとめサイトに関しては、いくら運営側が“ネットの書き込みをまとめただけ”で何かの意見を表明する独自の表現ではないと釈明しても、それは通じないという判例も出ています。今回は、NHKスタッフの実名まで出して放火事件とNHKの関係を記事にしており、事実誤認を誘っているし、名誉毀損も甚だしい」(在阪民放記者) 筆者はこれまで「まとめサイト」について運営者に取材をし、その問題点を提示してきたつもりだ。ほとんどの運営者は、アフィリエイトプログラムによる収益を得るためにまとめサイトを運営していて、大半は思想や主張よりも「儲かれば良い」といったスタンスであった。さらに、ほぼ全てのまとめサイト運営者は「不労所得が得られる」などといった情報商材を購入し、特に工夫もせず商材に書かれていたマニュアル通りに運営を行うというお粗末ぶり。そのため、まとめサイトを運営しても大多数の人が月に数百円の利益すら出せず、そのうちサイトをそのまま放置する……というのが現実だった。 当事者を取材するほど、まとめサイトは「あなたも金持ちになれる」といううたい文句が踊る情報商材を騙されて買ってしまうような「情報弱者」である運営者が作成していることが浮き彫りになるだけだった。さらにそれを読む人たちも、ネット上に存在する自身に都合の良い、そして自身が信じたい情報のみにしかアクセスしない「情報弱者」のユーザーに他ならなかった。そのため、取材後にはいつも「あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて、まとめサイトなどすぐに消える」と考えていたのだった。 ところが、最初の関連取材から数年が経った今も、消えると思っていたまとめサイトはなくならず、NHKが訴えたような悪質サイトは増え続ける一方。筆者は改めて、元情報商材の販売人で事情に詳しい男性に「今何が起きているのか」を聞いた。「まとめサイトやトレンドブログは今も増え続けていますが、大体が数ヶ月以内、ほとんどは一年以内に消えるか、放置され更新が止まります。カネにならないからです。止める人がいる一方で、月に数万円でも収益が出るサイトは、どんどん内容が過激になっていく傾向があります。例えば、事件が起きてテレビや新聞で被害者、被疑者、関係者の名前が出たら、即記事にする。犯人の顔写真は? 被害者の正体は? といったタイトルでユーザーを釣り、アクセス数をあげるんです。テレビや新聞が写真を出していなければ“裏が取れていない”リスキーな記事になるので、適当な写真にモザイクをかけて掲載し、写真を入手しているように見せかけることもある」 何かの事件が発生し、テレビなどで被疑者や被害者の名前が報じられた直後、その名前をネット検索してみると上位にヒットするのはまとめサイト、トレンドブログばかりだ。サイトの運営者はニュースを逐一チェックし、裏が取れていないほとんど憶測ともいえる情報を即座にアップするだけでなく、ネット上の噂などを切り貼りしつつ、情報操作、印象操作も行い、過激で耳目の集まりやすい記事を作る。全てはアクセス数、すなわち収益のためだ。「今回NHKが訴えたサイトは開き直っているようにも見えますが、サイト運営者の情報開示請求がなされた時点では、まさか訴えられるわけがないと甘く見ていたのでしょう」 こう語るのは、筆者が以前取材した元「まとめサイト」運営者。ネットの知識が乏しかったために、筆者の簡単な調査で氏名や住所、電話番号から勤務先までを突き止められ「(同じことは)マスコミもやっているだろう」などと反論してきた。今では、まとめサイトに関わる馬鹿馬鹿しさが身に染みており、運営から身を引いている。「まとめサイトの運営者は、ほぼ全員が高額な情報商材を買わされた情報弱者で、被害者の側面もある。ただし、自身でやっていいことと悪いことの判別がついていない人が多く“これくらいならいいだろう”と楽観的にまとめサイトの運営を行なっている。数十万、中には数百万出して情報商材を購入している手前、少しでも儲けないといけないと、悪質なことも平気でやるようになる。記事の削除依頼がきても無視するし、訴えられそうになって初めてことの重大さに気がつき、逮捕されるのではないかと震えた末に、全面的に非を認めて示談金を払うんです」 悪質なまとめサイト運営者が「被害者」とは、到底受け入れ難い身勝手な論理だが、まとめサイトが出来ては消えを繰り返しながらもなくならない背景には、こうした人々の存在がある。彼らは副業やアフィリエイトを奨励する世の中の雰囲気に煽られ、開いたスマホでレコメンドされる一部のグレーなYouTuberたち、非合法商売を奨励するような連中から「簡単に稼ぐ」「効率的に稼ぐ」と甘言を繰り返されて惑わされた挙句、リアルで大金を支払ってしまう。元手をかけたのだから“成功”しなければと追い込まれた挙げ句、他人を傷つけてでも金を得ようと、デマを拡散するような記事を作成する。その幼稚で浅はかな転がり落ち方には同情を禁じ得ないが、自身のやったことに対する責任はしっかり負わなければなるまい。
2020.01.28 16:00
NEWSポストセブン
11月14日、青葉真司容疑者は京都市内の病院へ搬送された(時事通信フォト)
「しくじり世代」が京アニ放火男へと堕さないために必要なこと
「しくじり世代」とは、団塊ジュニア・ポスト団塊ジュニアに対して近著『ルポ 京アニを燃やした男』が話題の日野百草氏がつけた呼び名だ。彼らは1993年~2004年頃のバブル崩壊後の新規採用が特に厳しかった時期に新卒を迎えた就職氷河期世代であり、30~40代になった今も非正規雇用、なかでも正規を望んでいるのに叶えられずにいる割合が高い。総務省の労働力調査によれば、35~44歳人口は1679万人、そのうち非正規雇用は28.8%にものぼる。その、しくじり世代のひとりが、未曾有の大惨事となった京都アニメーション放火事件の容疑者だった。みずからも「しくじり世代」である日野氏が、容疑者のしくじりから、30~40代の生き延び方を考えた。(文中一部敬称略) * * * 2019年7月18日、京都アニメーション第一スタジオに押し入り放火、36人もの日本が誇るクリエイターたちの命を奪った青葉真司。 彼は全身の90%もの火傷を負いながらも、近畿大学医学部附属病院熱傷センターが誇る最先端の医療技術によって生き長らえた。 34人の死亡後、2名が別の病院で入院中に亡くなられたことを考えると青葉の命拾いは納得いかないが、青葉は病院で「こんなに優しくされたのは初めて」などと泣いたという。別に青葉の命が大事なのではなく、青葉を被疑者死亡で幕引きさせないため、そして責任を取らせるためであり、私からすればこれだけのジェノサイドを実行しておいて、どこまでも自己本位かつおめでたい性格としか思えない。 青葉は犯行時41歳。1978年生まれの氷河期世代にあたる。私は1972年生まれ、私も仕事で何度かお会いした京アニの犠牲者の一人、武本康弘監督も1972年生まれの同学年だ。 拙著『しくじり世代』は奇しくも本事件と同年同月に刊行された。1971年から1981年生まれの団塊ジュニア、ポスト団塊ジュニアを取り上げたノンフィクションで、同世代の青葉と重ねて紹介されたこともある。今年1月の野田小4虐待死事件の父親が41歳、6月に家庭内暴力と引きこもりのあげく農水事務次官の父親に殺された息子が44歳、9月の東名あおり事件のエアガン男が40歳と、注目の事件に同年代が続出したことも手伝ったのかもしれない。前年には41歳のブロガーが43歳の無職にネット上の揉め事で刺殺されている。 私にとっての団塊ジュニア・氷河期世代のキーワードは「競争」である。 人口過多による過度の競争は団塊ジュニアを受験戦争、就職戦争に駆り立て、ときに他者を蹴落とし、ときに他者によって蹴落とされた。今とは比べ物にならないほど少ない大学の数に比しての受験人口の多さから大学受験は狭き門となり、偏差値50程度の高校なら大学全落ちの合格大学ゼロは当たり前、苦労して入っても卒業時にはバブルははじけ、就職氷河期となっていた。運良くそれを乗り越えた者も四大証券のひとつだった山一證券が自主廃業を決めたことにより起きた山一ショック(1997年)、米孤高の投資銀行リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことに始まった世界規模の金融危機リーマンショック(2008年)と相次ぐ淘汰の波に晒された。「しくじり世代」のしくじりとは、自己責任ではどうにもならないことの積み重ねで起きたものが多い。仕事、恋愛、結婚など、子供のころに大人たちから「真面目に普通にしていれば手に入れられる」と聞かされていたのに、まったくそうはならなかった。連なる不運に見舞われ挽回の手段をつかむ競争も熾烈で、そこでも失敗して「しくじり」を重ねる結果になった人も多い。普通が普通でなくなったことでしくじらされたというわけだ。もちろんこれは自己認識の問題であり、本書の登場人物は「全然しくじってない」という意見もあったが、それは当然で社会保障、福祉の範疇に当てはまるような方々は入れていない。それは世代に関係なく一定数存在するはずで、世代論をあいまいにしてしまうのであえて外している。 ドキュメント『しくじり世代』には、そうした競争世代の中で蹴落とし、蹴落とされ、そしてしくじったサバイバーが15人登場する。もうおじさんおばさんだというのに競争を、上昇志向をやめない団塊ジュニアの叫びである。地方名門公立高校や有名大学を出たにも関わらず、就職や結婚という旧来当たり前とされたレールに乗ることが出来ずに脱線した連中や、あるいは青春時代に底辺高校でヤンキー文化に染まり、いまだに一発逆転を夢見ているような連中である。 青葉はその一発逆転を夢見た後者にあたる。私は拙著『京アニを燃やした男』で青葉の出生から今回の愚行までの生涯を追ったが、彼は端から団塊ジュニア上位による競争とは無縁の「非正規」人生である。非正規、これも団塊ジュニアの重要なキーワードであり、その中の一人が青葉である。 青葉は生まれながらの殺人鬼ではない。埼玉県浦和市(現さいたま市)に生まれ、貧しい父子家庭ながらも地元の定時制高校に通い、高校卒業まで役所の臨時職員で家計を支えた。しかし役所は派遣会社を使うことになり青葉は雇い止めをくらい、卒業後は春日部市のアパートに一人暮らし始め、時給のいいコンビニの夜勤で働いた。そして労働者派遣法の規制緩和による派遣全盛期に実入りのいい派遣の道を選んだ。しかしリーマンショックによりバブルは弾け、食い詰めた青葉は再婚して地元に戻っていた母親を頼り、ハローワーク経由で雇用促進住宅に入居、2009年ごろ、郵便局で非正規のゆうメイトとして働く。 職選びに関しても青葉は見事なほどのしくじりぶり、団塊ジュニアの負け組における典型的な転落の地雷をこれでもかと踏み続けている。 いつしか青葉は一発逆転を夢見て小説を書き始める。青葉はワナビであった。 ワナビとは、英語のスラングwanna be、want to be(~になりたい)をあえてカタカナ表記した言葉で、「何者かになりたい」人のこと、とくに作家志望者のことを指すネットスラングのひとつだ。ここでいう小説とは純文学や一般小説ではなく、いわゆるライトノベルのたぐいである。 青葉は2012年にコンビニ強盗で逮捕された後に収監された刑務所内でも書き続け、出所後に京アニの賞に応募、それがパクられたと思い込み、今回の事件を引き起こす。青葉の夢は「大金持ち」であった。コミックほどではないがラノベにも一獲千金の夢がある。もっと下の世代なら動画投稿者など他のネットを中心とした手っ取り早い一発逆転を考えそうなものだが、あくまで作家として王道の受賞デビューを目指した。この辺、昭和の残滓である団塊ジュニアならではの旧来価値観から抜け出せない愚直さが青葉にはある。というか基本的に不器用だ。『京アニを燃やした男』でも当時の同級生から話を聞いているが、青葉はジャンプを読み、ファミコンに興じ、ガンプラを作る、1980年代の典型的な団塊ジュニアのどこにでもいる少年であった。この点で私たちと何ら変わることはない。背が高くスポーツも得意だった。貧しかったといっても社会保障的な貧困と定義するほどでもない。しかしバブル後の社会に高卒非正規で放り出され、長きにわたる氷河期によってしくじり続け、今回の事件に至った。 この青葉の帰結は極端だが、私たちもバブル崩壊後に放り出され(高卒の団塊ジュニア1期は違うが)、今や大なり小なり差が出来た。「サザエさん」のマスオや「クレヨンしんちゃん」のひろしはギャグ漫画の立ち位置として可哀相なサラリーマンのお父さんだったが、いつしか「勝ち組」と呼ばれるようになった。団塊ジュニア・氷河期世代には当たり前の正規職も、当たり前の結婚も、当たり前の我が子もいない層がひしめいている。下手をすると肉親とも疎遠で孤独の中かもしれない。 青葉も高校を卒業してすぐ、父親が自殺したあげく兄弟はバラバラ、孤独の中で40歳を迎えた。40歳といえば正社員のサラリーマンとして毎日満員電車に揺られ、うるさい妻がいて、生意気な子がいて、小さなマイホームにマイカーくらいはあって当たり前と私たち団塊ジュニアは思い込んでいた。いや、むしろそんな平凡な人生に落ち着くのは嫌だったかもしれない。だが、いまやすべて揃えるのは高値の花となってしまった。平凡でつまらないと思い込んでいた自分の親すら越えられないなんて! 残念ながら、旧来の成功価値観としての挽回は無理な人もいるだろう。それは匿名掲示板で学歴マウントやヘイトを垂れ流したところで解決などしない。「しくじり世代」もそんな大人こどもだらけである。何度も書くが、もう40代のおじさんおばさんなのに。 青葉は間違いなく私たちと同じ団塊ジュニアであり、結果の特殊性はともかく、多くの同世代とともにしくじった氷河期世代である。同じにするなと言うかもしれないが、現実である。 それにしても、しくじりの真の恐ろしさは孤独である。昨今は孤独礼賛の向きもあるが、とても恐ろしいことだ。 なぜなら、こんなしくじり続けた青葉にも寄り添う者はたくさんいた。面倒を見続けた母親、保護司やスタッフ、定時制の先生たち、瀕死の火傷から救ってくれた医療スタッフに「こんなに優しくされたのは初めて」などと言う前に、すでにいたはずの彼らに気づけなかったこと、その未熟な社会性と感受性の欠如こそが、責任を転嫁し続けた不遜な被害者意識による孤独こそが妄想を生んだ。 孤独は時にローンウルフを生み、結果京アニ事件のようなジェノサイドすら生み出す。これは私たち団塊ジュニア・氷河期世代にとって他人事ではない。もう私たちは40代、先は長くない。しかしまだ40代、これから中高年、高齢者として折返しの地獄を経験することにもなる。団塊世代と同じように、その数の多さと少子化による人口ボーナスを享受する老人として非難や蔑視を集めるエイジズムの対象となるだろう。 そして、これからもしくじりは待ち受ける。その地獄はもはや社会に対する転嫁や若いころの恨みつらみで乗り越えられるような試練ではない。ましてや団塊世代ほどの世代連帯もなく、手厚い年金も望めないであろう私たちは、このままでは改めてしくじった者から順に各個撃破されるだろう。 青葉の末路は特殊だが、青葉の歩んだ時代は私たちそのものである。だが私たちは青葉になってはいけない。独りよがりの孤独は私たちにも必ずいるであろう良き肉親、良き友、良き他人に気づき、時に頼り、時に感謝することできっと乗り越えられる。そのような他者は誰にでも必ず存在する。私たちがしくじるとするなら、それに気づいていないだけなのだ。これまでしくじったとするなら、それに気づけなかっただけなのだ。そんなことでと思うかもしれないが、シンプルな幸せを忘れたところにしくじりがあるのだ。それならそれでしくじりを認めよう。認めた上で先に進もう。 そして団塊ジュニア・氷河期という困難を生き抜いてきたことに誇りを持とう。偏差値の輪切りや昭和のルッキズムで比べられ続けた私たちは、今こそ自身の幸福を絶対視しよう。無意味なマウントや競争、くだらないヘイトをやめて相対的な自己ではない、絶対的な自己、幸福を求める先に、私たちしくじり世代の落ち着きどころがあるのだから。 もう団塊ジュニアが団塊ジュニアを殺す光景はまっぴらごめんだ。●ひの・ひゃくそう/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。ゲーム誌やアニメ誌のライター、編集人を経てフリーランス。2018年9月、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。2019年7月『ドキュメント しくじり世代』(第三書館)でノンフィクション作家としてデビュー。12月『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)を上梓。
2019.12.21 16:00
NEWSポストセブン
京アニ放火犯の「最先端治療費1000万円」は誰が払うのか
京アニ放火犯の「最先端治療費1000万円」は誰が払うのか
 36人が死亡した京都アニメーション(京都市伏見区)の放火事件から4か月あまり。全身火傷の治療で大阪府狭山市内の大学病院に入院していた青葉真司容疑者の事情聴取が、11月8日に始まった。「一番多くの人が働く第1スタジオを狙った」「どうせ死刑になる」。そう供述しているという青葉容疑者に対し、府警は回復を待って逮捕、取り調べを本格化する方針だ。 事件直後から意識不明状態が続いていた青葉容疑者は、当初入院していた京都市内の病院から大学病院に転院し、最先端の治療を受けていた(11月14日、京都市内の病院に再転院)。「大量の輸血、皮膚移植など、高度な集中治療が行なわれてきた。入院費を合わせると1000万円近い治療費が発生しているといわれている」(全国紙記者) 気になるのは、この治療費は誰が払うのかということ。北村法律事務所の北村明美弁護士が解説する。「逮捕、勾留後の治療であれば警察、つまり税金で払われますが、逮捕状が出ているだけの段階だと容疑者に支払い義務が生じる。ただ、これは『容疑者に支払い能力がある場合』のみ。なければやはり税金です。青葉容疑者は無職と報道されていますから、支払い能力があるとは考えにくい。よって税金から支出される可能性が高いでしょう」 仮に青葉容疑者に支払い能力があった場合、自己負担限度額以上の金額が払い戻される『高額療養費制度』などの制度は使えるのか。「原則として、なんらかの健康保険に加入している人が使用できる制度は、容疑者でも使うことが可能です」(北村弁護士) もし治療費が青葉容疑者に請求されても、高額療養費制度が使えれば、自己負担額は月あたり数万円程度になる。「死刑になる」と自ら口にする犯罪者にも優しい日本の医療保険制度に、割り切れない思いを抱く人は少なくないかもしれない。※週刊ポスト2019年11月29日号
2019.11.19 16:00
週刊ポスト
「上級/下級」の分断社会 世帯間の所得格差が加速度的に拡大するワケ
「上級/下級」の分断社会 世帯間の所得格差が加速度的に拡大するワケ
 日本社会の有り様を映し出す事件が相次いでいる。4月、87才の元高級官僚が東京・池袋で車を暴走させ、母子をひき殺したにもかかわらず逮捕されない事件が起きた。これをきっかけに、一気に広まったのが「上級国民」という言葉だ。『上級国民/下級国民』(小学館新書)の著者で作家の橘玲さんが言う。「そもそも上級国民という言葉は2015年に起きた東京五輪のエンブレムデザインの盗用騒動の際、大物グラフィックデザイナーが『一般国民にはわかりにくい』という上から目線の発言をして炎上したことで、ネットスラングとして生まれました。それが池袋の事故で、“日本社会は上級国民によって支配され、自分たち下級国民は一方的に搾取されている”といった怨嗟の声となり、再び爆発したのです」 7月、軽犯罪を繰り返し、生活保護を受けていたこともある無職男性(41才)が、京都アニメーションに放火して35人の命を奪った。就職氷河期まっただ中で社会に出て、定職につかずに暮らしてきた「下級国民」の男性が破れかぶれで起こしたテロリズム──ネット上ではそうした声が少なくない。 かつて昭和の時代、日本は「一億総中流社会」と呼ばれていた。平成の長期不況を経て、そんな牧歌的な社会は崩壊したようだ。橘さんが話す。「日本だけではなく、欧米先進国を中心に、主流(マジョリティー)だった人々が、中流の生活から次々に脱落しています。その結果、“一部の上級国民と大多数の下級国民”という社会の分断が進みました。アメリカで、かつての主流だった白人層の不満を集めてトランプ大統領が誕生したのは、その象徴的な出来事です。たしかに昔から社会には富める者も貧しい者もいました。ただ、努力すれば上流階級に成り上がれるという希望があった。 しかし、社会が分断された今、個人の努力ではどうにもならない冷酷な状況が生まれ、絶望が広がっています。いったん下級国民に転落すれば、下級として老い、死んでいくしかない。その不幸は本人ばかりか、子供、子孫にまで連綿と続く。幸せを手に入れられるのは上級だけ。そんな不都合な真実に、みんな薄々気づき始めています」 あなたは「上級」なのか「下級」なのか。隣人と比べて「上」なのか「下」なのか──そこから目を背けても何も始まらない。分断社会を受け入れるわけではないが、まずは冷静に、客観的に、さまざまな視点から、自分や家族が置かれた「序列」を見つめることが必要だ。そこから自ずと対処法も見えてくるはずである。◆「普通の世帯の所得」は423万円 もちろん自分や世帯の年収はわかっている。だけど、国民全体から見れば、自分は上から何%ぐらいのところにいるのだろう。または、下から数えた方が早いのか──そんな自分の“現在地”を知らない人は意外に多い。 厚労省調査(別掲グラフ)によると、日本の世帯の平均所得は551.6万円だ。ただし、この「平均」という言葉に騙されてはいけない。一部の超高所得者が一気に平均を引き上げてしまうので、実態とかけ離れてしまうのだ。実際、この平均の551.6万円よりも多く収入を得ている世帯は、全体の約38%しかいない。 日本の世帯全体を一列に並べると、所得が真ん中の世帯(これを中央値という)は423万円になる。統計上、この数字の方が「普通の世帯の所得」に近いといえる。つまり、おおよそ420万円ぐらいの所得なら、あなたの世帯はごく普通レベル。平均所得の550万円程度であれば、少しリッチな家庭といえる。それより多いか、少ないか、いかがだろうか。『アンダークラス』(ちくま新書)の著者で早稲田大学人間科学学術院教授の橋本健二さんが説明する。「ざっくり言うと、貧困線は中央値の半分といわれるので、423万円の半分(212万円)未満なら貧困層であり、『下級』といっていいでしょう。逆に、富裕層は中央値の2倍で、846万円以上は『上級』といえます」 別掲グラフを見ると、4世帯に1世帯以上(27.4%)が「年間100万~300万円未満」の世帯所得で、全体の中で最も多いグループだ。そのグループの大半が、一般には「貧困層」と呼ばれることになる。実は、この20年余り、日本人の収入は減り続けている。「振り返れば1997年が日本人の所得のピークでした。1997年の平均所得661.2万円に対し、2017年の平均所得は551.6万円。バブル崩壊やリーマン・ショック、非正規雇用の増加などで、所得水準は2割も落ちこみました。 今では、派遣やパートやアルバイトなど186万円以下の年収で食いつなぐ新最下層『アンダークラス』まで登場し、その数は約930万人、日本の労働人口の約15%を占めるほど急速に拡大しています」(橋本さん) 興味深いデータがある。「夫の所得階級別の妻の有業率」データだ。『夫婦格差社会』(中公新書)などの著書がある、経済学者の橘木俊詔さんが解説する。「1982年当時は、妻は夫の所得に応じて“働くか否か”を決めていたようです。夫の稼ぎが少なければ少ないほど妻も働きに出て、夫が700万円以上も所得があるならば、6割以上は専業主婦でした。 ところが、10年後の1992年になると、夫の所得が700万円以上でも、半数以上の女性が働くようになりました。2002、2012年になると、夫の収入が多くても妻は働くという傾向は、さらに強くなりました。一方、年間100万円以下の低所得の夫を持つ妻の有業率は、20年で10ポイント近く低下しました」 その結果、何が起きたかというと、もともと高所得の世帯(夫の収入が多い世帯)は妻の収入もプラスして、さらに高所得になった。その一方で、もともと低所得の世帯(夫の収入が少ない世帯)は、妻が仕事に就かなくなって、さらに収入が低下。つまり、世帯間の所得格差が加速度的に開いていっているのだ。前出の橘さんはこう分析する。「低所得にもかかわらず、妻が働かないのは、【1】そもそも学歴が低いため働く先が限られる、【2】子供を預けるお金がなくて働けない、【3】所得が低いため親と同居せざるを得ず、親の介護に時間がとられるなどの理由から、働きたくても働けない状況なのでしょう」 低所得層は、生活保護制度や自治体ごとの手厚い補助金などがあり、それを受け取るためにあえて働かない判断をする世帯も多いという。「しかし、補助金を期待して仕事をしないでいると、いつまでも貧困から抜け出せないばかりか現状の階級が固定化し、高所得層との格差は開く一方です」(橘さん)※女性セブン2019年10月10日号
2019.09.28 15:00
マネーポストWEB
78歳の新IT担当相、「違法ネット動画に高評価」疑惑への弁明
78歳の新IT担当相、「違法ネット動画に高評価」疑惑への弁明
「在庫一掃内閣か」とも揶揄される第四次安倍再改造内閣で、最も不安視されているのが、78歳にして初入閣した竹本直一・IT担当相。「はんこ議連」のメンバーということもあってか、デジタルとはんこの共栄を目指すと発言したり、就任早々、自身の公式サイトが閲覧できないトラブルで釈明に追われたりするなど、「USBを知らなかった桜田義孝元五輪相の二の舞か、と官邸は気を揉んでいる」(官邸担当記者)という。 竹本氏は建設省(現・国交省)出身で当選8回。大阪・富田林などを地盤とする選挙区(大阪15区)では、46歳の維新の浦野靖人氏(近畿比例)と接戦を繰り広げており、「SNSを活用する浦野氏を意識してかネットでの自己PRに熱心です。最近も小泉純一郎元首相や元横綱・朝青龍との写真を公開していた」(地元関係者)という。 だが竹本流ネット活用術が思わぬ騒動を引き起こしてもいる。自身の公式YouTubeアカウントで、政府が対策に取り組む違法アップロード(海賊版)の動画に「高評価ボタン」を押していたことが発覚し、ネット上を中心に問題視されているのだ。 動画は京都アニメーションが制作し、2016年に放送されたテレビアニメ『無彩限のファントム・ワールド』で、女子高生のキャラクターが胸を揺らしてリンボーダンスに挑む一場面だ。ITジャーナリストの新田ヒカル氏が解説する。「動画の説明文には京都アニメーションや放送局の許諾を受けている記載がないため、著作権を侵害する違法なものでしょう。それを視聴し、〈高評価ボタン〉を押したことで、違法アップロード行為を肯定したと捉えられても仕方ない」 竹本氏の事務所に聞くと、「代議士は動画を見ておらず、〈高評価〉も押していない」と弁明した。では誰が押したのか。「現在、事務所内で該当者を探していまして……」 ずいぶんITに疎い部下がいるようである。国民から“低評価ボタン”を押されても仕方あるまい。※週刊ポスト2019年10月4日号
2019.09.20 16:00
週刊ポスト
週刊ポスト 2019年9月13日号目次
週刊ポスト 2019年9月13日号目次
週刊ポスト 2019年9月13日号目次厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない!日韓両国のメリット・デメリットを徹底調査・怒りを抑えられない「韓国人という病理」10人に1人は治療が必要(大韓神経精神医学会)特集◆組長に銃弾の誕生日プレゼントが! 3つの山口組「血の9月抗争」が始まった◆菅が二階と麻生を蹴落とした!「アベノカジノ」3兆円利権争奪戦◆手術は成功したのに体調も気分もすぐれない…それ、「術後うつ」「退院うつ」かも◆夏バテより深刻な「9月バテ」の症状と対策◆潜入ルポ アマゾン絶望倉庫 最終回 「センター内でアルバイト死亡事故が続発していた」横田増生(ジャーナリスト)◆[検証シリーズ第2弾]あの増税は何に消えたか 復興税の不正流用◆オリックス・井上亮社長「大阪カジノ」「カーシェア」「金融サービス」…「リース」ではなく「投資」で儲けていく◆全スポーツの一流選手から夢の「ラグビー日本代表」を招集したら…◆今さら人には聞けないこと──50過ぎてあの女と「初めての…」◆星稜・奥川&大船渡・佐々木の将来は!? 超高校級2大エースプロ入り後の明と暗◆伝説のゲイバーママが明かす  昭和スター「人間交差点」3◆秋篠宮家vs外務省「ブータン家族旅行」某重大事件◆絶対に騙されてはいけない年金財政検証4つの嘘ワイド◆日経平均ZOZO加入?◆京都アニメーション◆Mステ21時枠移行◆チャゲアス ASKA脱退◆山﨑アナ 女子アナカレンダーの「序列」◆愛犬・愛猫「マイクロチップ埋め込み」義務化グラビア◆女性の下着白書 令和元年版◆私の勝負下着、いかがですか?◆「高嶺の花」12輪◆なをん。戸田れい╳╳╳して下さい。◆川村那月 令和のNo.1レースクイーン◆奥田咲 時には娼婦のように◆インタビュー 柄本明◆インタビュー 千賀滉大連載・コラム◆中川淳一郎「ネットのバカ 現実のバカ」【小説】◆柳広司「太平洋食堂」【コラム】◆二題噺リレーエッセイ 作家たちのAtoZ◆短期集中東田和美「60歳からの『儲ける競馬』」◆広瀬和生「落語の目利き」◆堀井六郎「昭和歌謡といつまでも」◆秋本鉄次「パツキン命」◆戌井昭人「なにか落ちてる」◆春日太一「役者は言葉でできている」◆大竹聡「酒でも呑むか」◆綾小路きみまろ「夫婦のゲキジョー」◆大前研一「『ビジネス新大陸』の歩き方」◆高田文夫「笑刊ポスト」【ノンフィクション】◆井沢元彦「逆説の日本史」【コミック】◆やく・みつる「マナ板紳士録」◆とみさわ千夏「ラッキーな瞬間」【情報・娯楽】◆のむみち「週刊名画座かんぺ」◆恋愛カウンセラー・マキの貞操ファイル◆ポスト・ブック・レビュー◆医心伝身◆ポストパズル◆プレゼント◆法律相談◆ビートたけし「21世紀毒談」◆坪内祐三の美術批評「眼は行動する」
2019.09.02 07:00
週刊ポスト
「京都アニメーション」第1スタジオ近くに設けられた献花台で手を合わせる女性(時事通信フォト)
京アニ放火 事件現場の献花台と供え物はどこに行くのか
 アニメ制作会社「京都アニメーション」(以下「京アニ」)で起きた放火殺人事件。8月27日、京都府警は犠牲者35人のうち公表していなかった25人の身元を明らかにした。「犠牲者は『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006年)や『響け!ユーフォニアム』(2015年)といった人気作品でキャラクターデザインを手がけた池田晶子さんをはじめ、京アニ作品になくてはならないクリエイターばかりでした」(社会部記者) 多くの人気作を輩出してきただけにファンの悲しみも深い。一夜明けた28日、放火被害にあった第一スタジオ周辺にはニュースを聞いてかけつけたという愛知県在住の30代男性の姿があった。ただ、供えるつもりだった生花を手にしながら困惑した様子だ。「いてもたってもいられず、花を手向けにきましたが、献花台が撤去されているんです。路上に置くわけにもいかず、どうしたらいいのか……」 事件直後には花束やメッセージを供えるために日夜を問わず列をなしたファンの姿もまばらになっていた。 25人の犠牲者公表の約1週間前、京アニは以下の発表をしていた。〈あの日から一か月が経過しましたことを節目に、8月25日(日)をもちまして、献花台の設置を終了させて頂きます〉 背景には近隣住民への配慮があり、〈第1スタジオへのお立ち寄りや写真撮影など、日常生活に影響を及ぼす行為はお控えいただきますようお願い申し上げます〉と記されている。同社の代理人弁護士も「やむを得ない措置とご理解いただきたい」とした。置かれていた大量の献花や供え物は、「会社が責任を持って管理する」とだけ説明した。 そのなかで、9月5日に迎える四十九日を控え、ファンからは追悼の場を求める声があがっているという。「お別れの会が開かれる予定ですが、時期は決まっていません。それまではアニメの舞台となった“聖地”とされる京都市の商店街や滋賀県の小学校がファンの祈りを捧げる場となるようです」(前出・社会部記者) 献花台はなくなっても、ファンや関係者の悲しみが癒えるまでは、まだまだ時間がかかりそうだ。※週刊ポスト2019年9月13日号
2019.09.01 16:00
週刊ポスト
忘れなければ作品の力は生き続ける 京アニファンが支える番
忘れなければ作品の力は生き続ける 京アニファンが支える番
 平成以降最悪の35人が死亡した放火事件から約1か月。この夏が終わる前にもう一度見つめたい──。 7月18日、京都市伏見区にあるアニメ制作会社「京都アニメーション(以下、京アニ)」第1スタジオが放火され、男女35人が死亡、34人が重軽傷を負った。黒く煤けた外壁と焦げ臭さがいまだに残る現場近くには8月末まで献花台が設置され、多くの人が訪れている。 日本を代表するアニメ制作会社である京アニ。『涼宮ハルヒ』シリーズ、『らき☆すた』、『けいおん!』など、たくさんの人気作品を生み出している。 そんな京アニの強みが、「物語が与える力」だ。それをよく示すのが2018年放送のテレビアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品だ。 この物語では、戦争で両腕を失って義手となった少女が手紙の代筆屋となり、多くの依頼者と出会う。最初は人々の感情が理解できない少女だったが、多くの人と接するうちに人間の心を知り、「愛している」という言葉の真の意味を理解していく。映画ライターの杉本穂高さんはこう説明する。「戦争を背景にした悲しい物語ですが、喪失感を抱えた人間がいかに立ち直るかが描かれていて、見終わった人は人生に対して前向きになれます。生きていれば理不尽なことに遭遇したり、大切な人を失うこともありますが、京アニ作品はそうした困難な状況においても、『世界を肯定する力』を与えてくれるんです」 京アニが描く「美しい風景」や「生き生きとしたキャラ」もまた、人々に大きな力を与えるものだ。「京アニは“私たちの住んでいるこの世界をいかに美しく描くか”を追求してきたスタジオです。そのために実在の場所をロケハンし、現実をカメラで切り取る以上に美しい絵を描くのです。 京アニが美しい背景を描くのは、私たちの生きているこの世界が実は美しいことを伝えるためであり、生き生きとしたキャラを描くのは、美しい世界を生き生きと過ごすことの素晴らしさを伝えるためです。確かにアニメは『絵』ですが、京アニの作品に宿る力は『絵空事』ではありません」(杉本さん) それゆえ私たちは、京アニが織り成す世界に魅了される。 事件後、京アニの八田英明社長は再起に向けたメッセージを出した。《京都アニメーションは、これからも世界中の人たちに夢と希望と感動を育むアニメーションを届け、社員、スタッフの幸せを実現し、社会と地域に貢献していくため、手を差し伸べて下さる方々とともに、必死に戦っていきます》 京アニ作品に触れる機会も新たに設けられた。 松竹は8月23日から東京・新宿ピカデリーと京都・MOVIX京都で京アニの劇場アニメ作品の特集上映を開催中だ。延期が囁かれた新作映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝―永遠と自動手記人形―』は、当初の予定通り9月6日に全国73館で公開される。 今回の犠牲者のひとりである、『らき☆すた』の監督・武本康弘さん(47才)の妻は事件後、報道陣に次のコメントを出した。《今まで作ってきた作品が全て。それを見ていただいたファンの方が評価していただいていることが全てです》 京アニに救われたファンが今度は京アニを支える番なのかもしれない。「私たちが京アニから受け取ったのは、世界を豊かに肯定する力です。私たちが忘れない限り、その力は何があっても生き続けます。その力を信じる人は、どうか京アニを支援してほしい」(杉本さん) 傷が癒えるにはまだ早すぎる。それでもまたいつの日か、世界を肯定する「京アニクオリティー」を宿した新作が発表されることを切に願う。※女性セブン2019年9月12日号
2019.09.01 16:00
女性セブン
アニメ制作会社「京都アニメーション」近くに新たに設置された献花台で手を合わせる人々(時事通信フォト)
京アニの功績を振り返る、働き方改革と細部へのこだわり
 平成以降最悪の35人が死亡した放火事件から約1か月。この夏が終わる前にもう一度見つめたい──。 7月18日、京都市伏見区にあるアニメ制作会社「京都アニメーション(以下、京アニ)」第1スタジオが放火され、男女35人が死亡、34人が重軽傷を負った。黒く煤けた外壁と焦げ臭さがいまだに残る現場近くには8月末まで献花台が設置され、多くの人が訪れている。 京アニの創業は1981年。創業者は八田英明社長と妻・陽子さんだった。陽子さんは東京のアニメ会社で働いた経験があり、最初は下請けでセルに色を塗る「仕上げ」専門の会社として、夫婦二人三脚で京アニを立ち上げた。 その後、作画や演出、美術や撮影などを少しずつ自前で行うようになり、やがて1つの作品を丸々自社で制作できるようになった。 黎明期の京アニを支えたのは、今回の事件で犠牲になった木上益治さん(61才)だ。 京アニをよく知る京都文化博物館の主任学芸員・森脇清隆さんが語る。「コストや手間がいくらかかっても絶対に手を抜かず、常に全力を出し切る。セリフや音楽に頼らなくても、絵の動きと演出ですべてを表現するという、京アニの作風を確立したのが木上さんでした」 映画『ドラえもん』シリーズや『火垂るの墓』『AKIRA』といった名だたる作品に参加しつつ、積極的に若手を育成した木上さんの尽力によって、京アニは2000年代半ばから『涼宮ハルヒの憂鬱』『けいおん!』などのヒット作を連発して、日本のアニメ界に不動の地位を築いた。 京アニの成功の理由の1つは、昨今唱えられる「働き方改革」を先取りしたことだと森脇さんが指摘する。「とりわけ素晴らしいのは創業者である八田陽子さんのマネジメントです。彼女は『まず生活を安定させなかったらええものはできない』『ものづくりは人づくり』との信念を持っていた。京都に根を据え、スタッフを正社員にして生活を安定させ、残業や休日出勤もできるだけさせずに、アニメーターを育成しました。そうした環境で人材が育ち、優秀な人がどんどん出てきたんです」 なかでも際立つのは、女性スタッフの活躍だ。ほかのアニメ会社に比べても、女性の割合は格段に高いという。「京アニでは、作画監督やキャラクターデザインという重要なポジションを女性が担うことが多い。もともとサブカルチャー的なアニメはロリコンや暴力のように男性の欲望を刺激するイメージを持たれるかたが多いですが、八田さんご夫妻は女性が見て不快になるような演出はしなかった。女性スタッフがメインの役割を担って男性目線の描き方を避けたことで、普通の女子中高生でもごく自然にアニメを楽しめるようになった。これも、京アニが世の中に受け入れられた理由の1つです」(森脇さん)◆「目を見るだけで分かる」 もちろん、作品そのものの素晴らしさも京アニが多くの人から支持される理由だ。 映画ライターの杉本穂高さんは、京アニ作品の最大の特徴は「細部へのこだわり」であると指摘する。「例えば、京アニ作品のキャラクターの“目”はどこのスタジオよりも細部まで描き込まれています。瞳の奥にあたる光の揺れまで再現する。“目”を見れば京アニの作品だとわかるほど、その繊細さは際立っています。 色彩のクオリティーも業界屈指で、『聲の形』では、時間の経過とともに主人公のシャツの色がくすんでいきます。キャラクターデザインも秀逸で、足が細すぎず、日本人らしいO脚を細部まで描く。背景の美しさも実に緻密です」 そうした特徴がよく表れているのが、2018年公開の映画『リズと青い鳥』である。テレビアニメ『響け!ユーフォニアム』のスピンオフ作品で、吹奏楽部に所属する女子高生2人の青春の葛藤を描く。 今回の事件で犠牲になった西屋太志さん(37才)がキャラクターデザインを、石田奈央美さん(49才)が色彩設計を担当した名作だ。「各キャラクターは髪の毛1本1本まで丁寧に描き込まれていて、見たことがないような淡いブルーで映画全体のトーンが統一されていました。わずかに動く唇の震えや瞬きの速度、揺れるポニーテールにまで感情が宿っていて、豊かな生命感にあふれています。亡くなった西屋さんと石田さんをはじめ、制作陣が見事というよりありません」(杉本さん) 実際、この映画のDVD特典のインタビューで西屋さんは、《目を閉じて開くというまばたきじゃなく、目を閉じないまばたき》にこだわったと語った。また石田さんは、《音楽室の壁の白いところに青みのグラデーションを入れて、フルートやオーボエの銀の部分にも青を入れた》と細部へのこだわりを明かした。※女性セブン2019年9月12日号
2019.08.31 16:00
女性セブン
現場には多くの花が手向けられている
京アニ放火被害者たちの功績とあまりにも大きい損失
 平成以降最悪となった京都アニメーション(以下、京アニ)放火事件から1か月以上が経った。凄惨な事件の実態が少しずつ明らかになっている。「7月18日午前10時半頃、京アニのスタジオに侵入した青葉真司容疑者(41才)が1階にガソリンをまいて火をつけた。わずか数十秒の間に3階建ての建物中に黒煙が広がり、従業員の目の前は真っ暗になったそうです。『火事だ!』という叫びや声にならない悲鳴の中、必死の思いでベランダにたどり着き、4~5mほどの高さを飛び降りて一命をとりとめた人もいます。とにかく黒煙の回るスピードが速く、生存者は『避難訓練や消火器はまったく役に立たなかった』と一様に口を揃えています」(全国紙社会部記者) 黒く煤けた外壁と焦げ臭さがいまだに残る現場近くには8月末まで献花台が設置され、多くの人が訪れた。京都市の36才女性が語る。「6才の甥が大好きな映画『魔女の宅急便』の制作に京アニが参加していたことを先日知りました。甥が愛する作品に携わったかたがたに手を合わせたいという一心で、折り鶴を持ってきました」 中国から来たという52才女性も沈痛な表情でつぶやく。「26才になる息子が京アニの大ファンなんです。今日は、『京都旅行をするなら献花してきてほしい』と息子に頼まれて、ここに来ました」 事件現場だけでなく、作品の舞台となった各地でも、悲しみに暮れる人々が集う。「事件後は、ロケハン現場に置いてある交流ノートに記入するファンの数が3~4倍になりました。みなさん涙ながらにメッセージを残されています」(アニメ『たまこまーけっと』の舞台となった京都・出町桝形商店街の元組合理事長・井上淳さん) 反響は世界各地に及び、アップル社のティム・クックCEOや台湾の蔡英文総統らが哀悼の意を表した。日本からはミュージシャンのYOSHIKIや、お笑いコンビ・霜降り明星の粗品らが寄付を申し出た。8月16日時点で寄付額は19億9761万円に達するという。 政府は京アニ再建のため、同社や被害者への寄付について、税制面の優遇措置の検討に入った。異例の処置である。◆両親に映画招待券を送り続けた息子 京アニ人気を確立した『涼宮ハルヒの憂鬱』で演出を担当し、女子高生の日常を描いた『らき☆すた』では監督を務めた武本康弘さん(47才)も犠牲者のひとり。「小さい頃から自慢の息子でした」と振り返るのは武本さんの父・保夫さん(76才)だ。「とにかく素直で明るい子で、学校の成績もよかったんです。小学生の頃から絵を描くのが好きで、友達の年賀状1枚1枚にドラえもんを丁寧に描いていた。同級生はそれを楽しみにしていて、今でも宝物にしてくれる子もいるみたいです」(保夫さん・以下同) 武本さんは就職後、京アニが制作した映画の招待券を欠かさず両親に送っていた。「いつも家内と一緒に見に行きました。映画館は若者ばかりで場違いな気持ちにもなったけど、若い子らが息子の作った作品を楽しみに映画館に来て、喜んで見てくれるのを目の当たりにしていつも誇らしい気持ちになりました」 日常生活の細かな描写に徹底的にこだわり、アニメの可能性を広げた武本さんは、京アニの取締役を兼ねながら数々のヒット作を手がけた。『らき☆すた』は、ファンが映画の舞台を訪れる「聖地巡礼」ブームの先駆けとなった。 家庭では小学2年生の娘を持つよきパパだった。 事件後、「お父さんはいつ帰ってくるの?」としきりに尋ねる孫に、保夫さんは「今は病院だよ」と答えたという。「通夜と告別式が終わり、孫も父親が亡くなったことを理解しているようです。今は精神的なショックで、ひとりでトイレに行けなくなったと聞いています」 原画や動画を担当し、人気作の『氷菓』や『たまこまーけっと』などの制作にかかわった宇田淳一さん(34才)も幼い娘を残して旅立った。 職人気質の宇田さんは1枚1枚の絵をコツコツと丁寧に描き、放送後にも細かなチェックを繰り返した。現在1才の長女が生まれてからは、“娘が将来、作品を見た時に話せるようにがんばる”と夢を語っていたが、残念ながら帰らぬ人となった。 気鋭のクリエイターとして将来を嘱望されていた西屋太志さん(37才)。「アニメの根幹をなすキャラクターデザインを担当していて、水泳男子の肉体美を描いた『Free!』や、聴覚障害の主人公を描いた『聲の形』(こえのかたち)などの作品が高く評価されました。精鋭揃いのスタッフの中でも未来を担うとされる人材と注目されていました」(制作会社関係者) 今年4月25日のブログで西屋さんは、劇場版『Free!』の制作に向けて、熱い期待をこう綴っていた。《みんながどこまで行けるのか、どんな未来にたどり着くのか、自分も楽しみです。今もまた、どっぷりと『Free!』に浸かっています》 西屋さんが楽しみにしていた未来は無残にも奪われた。◆「手描き」にこだわる理由『無彩限のファントム・ワールド』や『小林さんちのメイドラゴン』など、多くの作品で美術監督を務めた渡邊美希子さん(35才)は、真面目で気遣いを欠かさない人柄で誰からも慕われていた。 京アニが開設する「プロ養成塾」で講師を務めていた渡邊さんは、京アニが「手描き」にこだわる理由について、こう述べていた。《手描きの背景画を教えているのは、その先に誰かを感動させる背景画がある事を知っているからです。一幅の絵画のようでありながら、生活そのものを描き切ってみせる、アニメーション背景ならではの感動がそこにあり、学ぶ価値があると、信じているからです》 京アニを愛し、自らの仕事に夢と希望と誇りを抱きながら、よき家庭人でもあった人たち。約束されたはずの未来が突然絶たれた無念さは筆舌に尽くしがたい。 京アニの「命」でもある美しい色彩表現の中核を担いながら犠牲になった石田奈央美さん(49才)の母親は、本誌の取材にこうつぶやいた。「1か月経とうが、1年経とうが思いは変わりません。娘がいないという現実と気持ちの折り合いがつきません」 失われたものはあまりにも大きい。※女性セブン2019年9月12日号
2019.08.30 16:00
女性セブン

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