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2020.02.09 06:59  女性セブン

知られざるアイヌと北方少数民族【後編】 日露の歴史に翻弄

ウィルタの太鼓(北海道立北方民族博物館所蔵)

 当時の樺太は、島のほぼ中央を東西に走る北緯50度線を境に南側が日本領、北側がソ連領だった。敷香は国境から近く、北側のソ連の動向を探ることが特務機関の最大の任務。そのために利用したのがウィルタやニヴフといった少数民族だった。

『ゴールデンカムイ』第16巻にはヒロインのアイヌ少女らがウィルタに変装してトナカイの橇(そり)で樺太の国境を越えるシーンが登場する。実際に当時、トナカイを追って遊牧生活をする少数民族が国境を行き来することを日ソ当局も黙認していた。

 扇貞雄は手記『ツンドラの鬼 樺太秘密戦実録』のなかでこう記している。

《機関において直接使役指導中のものは三百名を越え、彼らの大部分は常に南樺太の数倍にのぼる北樺太在住の親族と国境を越え自由に往来し、敷香機関の重要な情報源工作対象となっていた》(以下、《》内は同書から抜粋)

 少数民族には秀でた能力があった。

《彼ら男子の射撃の技術は、けだし神技に近く、飛ぶ鳩の右眼を、大木の上に動くリスの左眼をと命ずれば、必ず確実に右眼左眼に命中させはずれることがない》

 狩猟を得意とし、樺太の森林を熟知した彼らの利用価値を見出した日本軍は、少数民族のなかから優秀な者を召集し、遊撃戦(ゲリラ戦)の軍事訓練を施した。

《理解応用能力は日本軍中の専門家である中野将校さえ舌を巻くほどで、生まれながらの遊撃戦士であり、冬期の犬橇、トナカイ橇作戦、夏期の丸木船作戦等はみごとの一語につきた》

◆「大切なものを納める家」ジャッカ・ドフニにウィルタの文化を残した

 日本軍特務機関によって「遊撃戦士」に仕立て上げられたひとりに、ウィルタのダーヒンニェニ・ゲンダーヌ(日本名・北川源太郎)がいる。敷香に近いオタスという集落の出身だ。当時、樺太を統治する樺太庁はここに少数民族を集住させていた。

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