日本海をバックに橋を渡る「トワイライトエクスプレス瑞風」の1番列車と撮影する鉄道ファンたち。有名な撮影スポットとして知られる余部橋梁は空の駅として展望台などが整備されている。(時事通信フォト)
鉄道撮影には、誰もがここから撮りたいと考える絶好のスポットが存在する。鉄道マニアの間で、そうした場所は“お立ち台”と呼ばれる。
“お立ち台”を確保できるかどうかは、写真の出来・不出来を大きく左右する。それだけに、お立ち台を確保する熾烈な争いが起きる。そうした場所取り合戦が行き過ぎた結果、鉄道用地や私有地に侵入するという不法行為が横行してしまうこともある。
それらが、「撮り鉄はマナーが悪い」という負のイメージを植えつける一因にもなる。みんなと同じ場所で撮るという撮り鉄の集団心理に対して
「みんなと同じ場所・構図の写真ばかりで撮ると、それは図鑑写真のようになってしまいます。せっかくカメラの腕を磨いて鉄道撮影に臨むのですから、撮影者の個性を感じられる素敵な写真を撮る方が撮影者にとっても楽しいはずです。そうした個性を活かすためにも、みんなと同じ場所で撮るだけではなく、列車に乗って沿線を観察し、それから自分の足で沿線を歩き回って自分だけの撮影場所を探すことも重要です」と伏見編集長はアドバイスする。
鉄道写真が図鑑のような似た構図になってしまう理由のひとつに、“撮り鉄カースト”の存在もある。鉄道写真には桜や菜の花、海、山、雪といった周囲の風景と鉄道車両をからめた写真も数多くある。
しかし、撮り鉄はそうした風景をからませた写真を評価しない傾向が強い。風景をからませた写真は「風景写真」であり、「鉄道写真」ではない、という理屈だ。
そのため、“撮り鉄カースト”においては編成写真が最上位という意識が強い。編成写真とは、先頭車両から最後尾車両までを一枚に納めた写真をいう。編成写真は鉄道車両を記録的に写しているので写真的な妙味は薄い。記録的要素を強く含んでいることからも、編成写真は図鑑のような構図になりがちだ。それでも、編成写真を上手に撮ることが撮り鉄にとってステイタスとされる。
編成写真至上主義がなくならない限り、撮り鉄が“お立ち台”に殺到する現象は続くだろう。
こうした旧来の撮り鉄問題に加え、近年はスマホやミラーレスといったカメラが身近になったことで新たな問題も生まれつつある。