国内

「二・二六事件」85年目の真実 唯一“戦死”した陸軍大将

渡辺錠太郎大将の最後の写真。事件の6日前に撮られた(渡辺家蔵)

 日本最大のクーデター未遂事件──二・二六事件。その衝撃は大きく、事件を取り扱った書籍は膨大で、事件関係者の回想から、作家やジャーナリストによる著作、学者による研究と、その種類は多岐にわたる。小説や映画などにも数多く描かれてきた。

 しかし、この事件で殺害された要人のうち、陸軍の教育総監だった渡辺錠太郎については、これまであまり多くを語られてこなかった。

 地元(愛知県小牧・岩倉)を除いては一冊も評伝がなく、歴史的な事件の犠牲者にしては、さほど知名度は高くない。娘のシスター渡辺和子が、ベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』などの著作の中で渡辺家を襲った事件について書いているため、多くの読者は錠太郎の悲劇を知っている。だが、その人となりや、「戦争回避」「非戦」を訴えていた錠太郎の思想や軍歴が語られる機会は少なかった。

 そんな人物の初めての本格評伝『渡辺錠太郎伝』(岩井秀一郎著・小学館)が刊行されたことで、事件から85年目を迎える今、にわかに注目が集まっている。

◆井伏鱒二が見聞した「渡辺邸襲撃」

 渡辺錠太郎襲撃については、他の被害者と異なる点がいくつも指摘されている。

 まず、襲撃場所となった渡辺錠太郎の私邸は、杉並区荻窪にあった。他の襲撃場所が永田町や赤坂、九段など東京の中心部だったのに対して、渡辺邸だけが都心から離れた場所にあった(*注)。また、元首相の斎藤実(まこと)内府を襲撃・殺害した後の「第二次目標」だったため、時刻も夜明けが近い午前6時前後だった。そのため、多数の近隣住民が雪に覆われた住宅街にとどろく銃声を耳にしている。

【*注/もう一人、元内府の牧野伸顕は湯河原の滞在先を襲われたが、難を逃れている】

関連記事

トピックス

愛されキャラクターだった橋本被告
《初公判にロン毛で出廷》元プロ棋士“ハッシー”がクワで元妻と義父に襲いかかった理由、弁護側は「心神喪失」可能性を主張
NEWSポストセブン
水谷豊
《初孫誕生の水谷豊》趣里を支え続ける背景に“前妻との過去”「やってしまったことをつべこべ言うなど…」妻・伊藤蘭との愛貫き約40年
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年9月28日、撮影/JMPA)
「琵琶湖ブルーのお召し物が素敵」天皇皇后両陛下のリンクコーデに集まる称賛の声 雅子さまはアイテム選びで華やかさを調節するテク
NEWSポストセブン
世界選手権でもロゴは削除中だった
《パワハラ・セクハラ問題》ポーラが新体操日本代表オフィシャルスポンサーの契約を解除、協会新体操部門前トップが悔恨「真摯に受け止めるべきだと感じた」
週刊ポスト
辞職勧告決議が可決された瀬野憲一・市長(写真/共同通信社)
守口市・瀬野憲一市長の“パワハラ人事問題”を市職員が実名告発 補助金疑惑を追及した市役所幹部が突然の異動で「明らかな報復人事」と危機感あらわ
週刊ポスト
新井被告は名誉毀損について無罪を主張。一方、虚偽告訴については公訴事実を全て認めた
《草津町・元町議の女性に有罪判決》「肉体関係を持った」と言われて…草津町長が独占インタビューに語っていた“虚偽の性被害告発”
NEWSポストセブン
当時の事件現場と野津英滉被告(左・時事通信フォト)
【宝塚ボーガン殺人事件】頭蓋骨の中でも比較的柔らかい側頭部を狙い、ボーガンの矢の命中率を調査 初公判で分かった被告のおぞましい計画
週刊ポスト
田久保真紀市長が目論む「逆転戦略」は通用するのか(時事通信フォト)
《続く大混乱》不信任決議で市議会を解散した伊東市の田久保真紀市長 支援者が明かす逆転戦略「告発した市議などを虚偽告発等罪で逆に訴える」
週刊ポスト
青ヶ島で生まれ育った佐々木加絵さん(本人提供)
「妊活して子どもをたくさん産みたい…」青ヶ島在住の新婚女性が語る“日本一人口が少ない村”での子育て、結婚、そして移住のリアル
NEWSポストセブン
祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《夫にピッタリ寄り添う元モー娘。の石黒彩》“スマホの顔認証も難しい”脳腫瘍の「LUNA SEA」真矢と「祭り」で見せた夫婦愛、実兄が激白「彩ちゃんからは家族写真が…」
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
《目撃者が明かす一部始終》「後ろめたいことがある人の行動に見えた」前橋・女性市長の“ラブホ通い詰め”目撃談、市議会は「辞職勧告」「続投へのエール」で分断も
NEWSポストセブン
本誌記者の直撃に答える田中甲・市長
【ダミー出馬疑惑】田中甲・市川市長、選挙でライバル女性候補潰しのために“ダミー”の対立女性候補を“レンタル”で擁立した疑惑浮上 当の女性は「頼まれて出馬したのか」に「イエス」と回答
週刊ポスト