「2番目の医師は、それまでの経過を踏まえた豊富な情報をもとに診断ができたため、1番目の医師より有利だったのです」

 医師からしてみれば、病院を頻繁に変えない方が、病気はもちろん、既往症や生活習慣といった、患者に関するさまざまな情報が積み重なり、診断材料が増えるので、より的確な治療ができるという。

「医師が、患者さんの考えや不安を理解する努力をするのは当然です。一方で患者さんにも、医師が何を考えて診断をし、医療行為をしているかを知ってもらえると、意思の疎通がしやすくなって、病気への理解度が深まり、よりよい治療ができると思います」

◆余計な医療は不要と説明できるのが名医

 しかし、患者はそのような“医師側の事情”など、知る由もない。こういったケースでは、最初の医師は信用を落とし、悪評すら立てられかねない。そうならないよう“サービス”として、患者が望む検査や欲しがる薬を提供したいと考える医師も中にはいるという。患者の目には、そういった医師の方が、満足いく治療をしてくれるという点で“名医”に映るかもしれない。しかし、本来の名医とはその逆だと山本さんは力説する。

「一般外来を訪れる患者さんは比較的軽症のケースが多く、精密検査や入院、手術などが必要な重篤な病気はせいぜい1割以下でしょう。つまり、ほとんどの患者さんに血液検査やレントゲン、CT(コンピュータ断層撮影)などの検査は必要ありません。しかし、検査を受け、薬をもらってこそ診療だと考える人が多く、それが適切な治療の妨げになることがあります」

 患者にしてみれば、体調の異変はとてつもない不安だ。いまは軽い症状でも、重篤な病が潜んでいるかもしれない。何時間も待たされた末、検査はされず薬も処方されないとなると、「こんなにつらいのに、何もしてもらえなかった。この診断は正しいのだろうか」と不安になるのも当然だ。

「本当の名医とは、必要のない薬や検査を見抜いて、患者さんにそのことを伝え、不安を拭い去るような説明がきちんとできる医師をさすと、私は思っています」

 つまり、患者に安心を与えられる医師こそ名医なのだ。

「確かに検査や薬は大切ですが、もっと大切なのは病状についての情報を得るための“問診”。ここを大切にし、きちんとコミュニケーションを取れる医師かどうかを見抜くことが、患者さんにとって必要なスキルだと思います」

 では、コミュニケーション能力が高い医師かどうかを見抜くにはどうしたらいいのか。それは患者側からも質問をしてみるしかない。

 ひと昔前は、「私の言うことを聞きなさい」という態度の医師が多かったため、年配のかたには、勇気がいる行為かもしれない。しかし最近の医師はむしろ、患者との対話を大切にする傾向にある。自分の命がかかっていると思って次の診察時にはぜひ、話しかけてみよう。

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