鎮痛剤を飲み続けると
京都府の上田美紀さん(65才・仮名)の経験談だ。
「寝違えたのか、首が痛くて整形外科を受診しました。そこで痛み止めを処方されたのですが、数か月経つと頭がぼうっとして、ものすごくだるくなって、ついには歩けなくなってしまった。別の内科の先生にかかると、痛み止めが原因だと指摘されました。不安に思ってのむのをやめたら、体調が戻りました」
上田さんに処方された痛み止めは「プレガバリン」を主成分とする薬だった。
「プレガバリンは、いうなれば麻薬に近い薬です。神経の興奮を抑えて痛みを止めると同時に、脳神経に非常に強く作用します。めまいや眠気、意識消失などが多数報告されており、特に高齢者への投与は注意が必要な薬です」(松田さん)
これは医師による処方箋が必要な処方薬だが、誰でも買える市販薬も、のみ続けてはいけないものが多い。
「メジャーな鎮痛薬のほとんどは『NSAIDs(エヌセイズ=非ステロイド性抗炎症薬)』に分類され、胃が荒れる副作用がある。のみ続けることで胃潰瘍になったり、胃穿孔(せんこう)といって胃に穴が開くことも珍しくない。短い人では1~2週間程度で潰瘍や穿孔ができる人もいるようです」(長澤さん・以下同)
市販の主なNSAIDsには、アスピリン、ロキソプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシンなどがある。いずれもどこかで聞いたことのあるような名前だ。
「強い酸性の『胃酸』で満たされながらも、胃そのものが溶けないのは、『プロスタグランジン』という成分の働きで守られているから。ところがNSAIDsの鎮痛薬はプロスタグランジンを減らす働きを持っており、胃を保護できなくなる」