稽古の風景からは、芝居を愛する様子がひしひしと伝わる
◆稽古場に広がる温かさと笑顔
祝祭公演は2009年初演作を新演出でスケールアップした、『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』。戊辰戦争の時代、愛と笑顔に満ちた民族「タバラ」が日本の動乱に巻き込まれていく悲劇を島に流れついた青年(新田真剣佑)の視線で描く。新キャストで臨む中、タバラのリーダー・ザージャ(寺脇)と島に流れつく倭人・トド(岸谷)は続投。わかり合えたはずのふたつの民族が引き裂かれていく時、ザージャとトドに寺脇と岸谷の絆が重なるほど胸が苦しくなる。
「民族の迫害が現実問題としてあることはまさに今作のテーマで、実際にロヒンギャの難民キャンプにも行ってきました。現地の実情は笑えたものじゃないけれど、それでも子供たちは無邪気に笑っている。キラキラした表情は忘れがたく、心に響きました」
岸谷の体験はキャスト、スタッフと共有し、自らが手がける脚本も手直しをしたという。作・演出を担う岸谷の歩みは作品に色濃く投影されているのだ。
「タバラの民族が追われる中で、国ではなく大きな家族を作ることが争いをなくすんだと説く台詞があるのですが、それは自分が結婚して親になり感じたことでもあります。結婚で小さな家族が作られ、子供が生まれて真の家族となっていく。その重なりが村となり、町となり、やがて国となる。そう考えられたら世界は平和でしょうし、先にある大きな家族を幸せにするためにいちばん小さな家族の笑顔を守ろうと努力をします。
家では普通の父親ですが、いわば“昭和の親父”かな。岸谷家のピラミッドの一番上にいて、決定権を握っている。親父がNOといったらダメ。そんな家庭です。子供たちは父を見て苦労したくないと思ったのか、今のところ役者には興味ゼロです(笑い)。舞台は家族で観に来ますよ。上の子はもう高校生だし直接感想は言いませんが、それぞれにメッセージを受け取って帰っているようです」