ペットの高齢化に伴い、リハビリテーション科を常設する動物病院が増えているという。そこでは、老化によって衰えた筋力を回復させるためのさまざまな指導が行われている。具体的にどんなことをし、どんな効果が期待できるかを紹介する。
愛猫が長生きしてくれるのは喜ばしいことだが、高齢になれば、足腰が弱くなるなど身体機能が落ち、寝たきりになって飼い主の介助が必要になることも。飼い主も高齢の場合は、最期まで面倒が見られなくなるケースもある。
こういった事情を踏まえて最近では、“元気で長生き”できるようにと、獣医療の分野でも、老化により低下した体の機能を回復するためのリハビリテーション(以下リハビリ)の重要性が注目されている。
「リハビリは、病後の機能回復のためだけに行うわけではありません。最期まで猫らしく生きるために必要な機能を維持するためにも、重要な意味があります」
こう話してくれたのは、犬猫を対象としたリハビリ専門病院、D&C Physical Therapy院長の長坂佳世さんだ。
リハビリは身体機能だけでなく、精神面にも変化をもたらすという。いままでできていたことができなくなるストレスや慢性的な痛みも、リハビリで緩和できるからだ。では、具体的にはどのようなことを行うのだろうか。
「リハビリの内容は動物の種類や年齢、生活環境により異なりますが、当院では、マッサージや保温、冷却、超音波治療、電気治療、鍼治療などの理学療法を行っています。それに加え、ストレッチや散歩、スクワットといった運動療法を組み合わせることもあります」(長坂さん・以下同)
例えば、バランスボードを使用したトレーニングも。体幹や脚の筋肉が鍛えられる。アメリカには、獣医師のほかに“動物理学療法士”も存在し、ペットのリハビリに対する意識が高い。日本ではまだ、獣医療の一環として、獣医師が行っている場合が多い。
また、脊髄梗塞(脊髄へ血液を供給する血管に問題が生じて起こる病気)の後遺症により、脚に麻痺などが残る場合は、鍼治療やマッサージを施し、硬くなった筋肉をほぐしていく。また、高齢猫に多い馬尾症候群(腰付近の神経系の病気)では、腰痛や足のふらつきなどの症状が現れるため、保温や鍼治療を行うという。
椎間板ヘルニアの手術後のリハビリでは、ボールをお腹の下に入れて体を安定させ、両脚でしっかり立てるよう訓練する。