ギャンブルで大事なのはフォーム、と色川武大御大は説いておられる。馬券の種類の固定である。専門誌記者の友人はいつでも3連複。3連単と比べると配当の期待値は6倍。3連単では人気馬が1着だと期待値以下になることも多いからという。友人は3連複を前提にパドックを見る。すると、定点観測的な恩恵も得られ、検討のブレも小さくなる。
なるほど、複勝狙いならばそれを貫けばいい。ギリギリでも3着に入る馬はどれか? その眼力が研かれてくるというわけだった。
現実に、返し馬を見終えてから「さて、どんな馬券を」などと考える暇はない。そのときに決めなければいけないのは投入金額である。
フォームといえば、面白い話を聞いたことがある。常に同じ目、(3)-(10)、(7)-(12)、(8)-(14)の馬連を買うというのだ。私はこういうのが大好きなので、真似して(7)-(4)を買い続けたことがある(74はアメフト選手時代の背番号。だから馬単)。しかしただの一度も的中せず、(4)-(7)の馬連やワイドに移行しても当たらず、フォームもヘチマもなくなったのだった。
●すどう・やすたか 1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年3月27日号