◆安倍官邸への決別宣言

 それを物語るのが、安倍首相が全国一斉休校要請を突然発表したとき、休校に慎重だった菅氏が決定を直前まで知らされていなかったことだ。最終判断は発表当日(2月27日)、官房長官がいない席で、首相と今井尚哉・総理補佐官らごく一部の側近だけで決定されたとされる。

 菅氏自身がその経緯を参院予算委員会でこう説明している。

「どうするか(首相と)議論した。『最終的には首相のご判断ですよ』とも申し上げた。4~5日間議論して、首相がその日午後、判断されたと聞いた」

 全国の小中高校を休校させるには文科省、総務省をはじめ多くの役所が関係する。その重大な決定を行なう会議に、「行政各部の総合調整」を所掌事務とする内閣官房長官が呼ばれないというのは異例中の異例だった。

 菅氏に近い議員は、それ以上に菅氏が自ら内情を明らかにしたことに驚いたという。

「菅さんの反対を総理が聞き入れなかったことはこれまでも何度もあったが、そのやりとりを一切言わないのが菅さんの基本姿勢でした。しかし、今回は裏事情を国会で答弁し、しかも自らが“部外者”であったことを隠しもしなかった。安倍官邸との関係が悪化し、国の重要な決定が官房長官抜きで決められることに、“やってられるか”と感じているからでしょう。こんな体制では感染対策は無理だという批判、安倍官邸に対する決別宣言だと感じた」

 官房長官が国政の重要事項に関与できなくなれば、残る仕事は毎日2回の定例会見を行なう“ただのスポークスマン”だ。

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