「君、君たらざれば、臣、臣たらず」

 中国の法家の書「管子」にある言葉だ。

 政権を支えてきたと自負する菅氏が、安倍首相の仕打ちに屈辱を感じなかったはずがない。菅氏は首相を“支え甲斐がない上司だ”と愛想を尽かした。それからの官房長官会見は精彩がなく、会見でも役人が書いたメモを棒読みするばかりになった。政権を支えるモチベーションを失っていることが傍目に見て取れる。

「総理の動画アップについても菅さんが相談を受けていたら止めていたでしょうが、知らされないまま、批判を浴びると会見で説明責任だけ押し付けられた。菅さんは感染対策が一段落した時点で官房長官を辞任する腹を固めているでしょう」(同前)

 こうして総理と官房長官が「官邸内別居」の状態になったことが、政府のコロナ対応を迷走させていく。政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。

「安倍首相は“強いリーダー”像を掲げてはいるが、もともとトップダウン型ではなく、バランス型の総理。政策判断ではブレーンや部下が提案した案のうちどれにするかを選ぶ。その案に役人が反対すれば官僚人事を握る菅官房長官が抵抗をはねのけて実行していくという役割分担だった。だが、決定するのは安倍、実行するのは菅という政権運営の仕組みが崩れ、口うるさい“女房役”がいなくなった安倍首相が自ら危機管理の司令塔になると、政府の方針がコロコロ変わるようになった」

 この肝心なときに官邸は機能不全に陥った。

※週刊ポスト2020年5月1日号

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