番組開始当初、娘が中学1年生だった岡江は朝5時に起き、弁当を作り、家事をしてからスタジオ入りしていた。女優だからといって一段高く構えることなく、庶民的な姿勢が画面から滲み出ていたため、視聴者がついてきたのだろう。放送1000回を迎えた頃、岡江はこう話していた。
〈優しさや愛が根本にある番組を作っていきたい。これを見て、前向きな、はなまるな午後が送れたらいいですね〉(2000年8月18日 朝日新聞)
不況の実感が増し、日本に閉塞感が漂い始めた1990年代後半から2000年代にかけて、お得な情報を届け、暖かい雰囲気のある『はなまる』は時代にマッチしたのかもしれない。この番組の成功によって、他局のワイドショーは芸能や事件だけでなく、生活情報なども幅広く取り上げるようになった。
長年、高視聴率を維持してきた『はなまる』だが、2010年に異変が起こる。NHKが連続テレビ小説(通称・朝ドラ)の時間を15分早めて8時に繰り上げ、8時15分から生活情報番組の『あさイチ』をスタートさせた。すると、朝ドラの視聴率が回復し、『あさイチ』への視聴の流れを作った。そのため、8時30分開始の『はなまる』は視聴者を奪われる形となった。
2013年11月6日の放送で番組終了を発表した後、岡江はスタッフにこう声をかけたという。
「終了ではなく、ゴールだと思うよ。一日一日精いっぱい情報を伝えていこう」(2013年11月19日・読売新聞)
卒業という安易な言葉を使わず、終了と落ち込むわけでもない。長寿番組の残り5か月を“ゴール”と的確に表現し、スタッフを鼓舞した。誰よりも、岡江自身が“優しさや愛”を根本に持っていたのだ。最終回、岡江は「ゴールを迎えられてホッとしています。17年半の思い出を忘れることはありません」と涙ながらに語った。